『美しき隣人』

1940年、松竹大船で作られた農林省馬政局推薦映画で、軍馬飼育と満州への移住をテーマとした作品。
戦意高揚映画が上手く出来なかったと言われる松竹としては、上出来の部類だと思う。

東京丸の内の会社で働いていた水戸光子は、兄の笠智衆が中国に出征し、母親飯田蝶子一人になったことから、会社を辞めて山深い信州の実家に戻る。
そこでは、農業の他、軍馬の飼育もしていて、貧しい農村の、数少ない現金収入になっている。
幼い頃からの許嫁のような男とも再会し、愛を確かめ合う。
男は、高倉彰という男優で、佐田啓二に似た感じで、戦前から戦後まで結構出ていたらしいが、初めて見た。

農家の次男である高倉彰や近衛敏明らは、満州開拓の移住を計画していて、最後高倉ら3人は、村人の盛大な壮行を受けて満州に旅立っていく。
その間に山に保養とスキーに来た、東京の同じ会社の金持ちの広瀬徹と妹これが三浦光子(私はこの女優が好きなのだが)が絡んで来て、都市と農村、富裕と貧困の対立も描かれるなど、さすがに監督の大庭秀雄の描写は細かい。

水戸光子を置いて、「開拓には女は不要だ」との悲壮な決意で満州に行った高倉も、「むしろ開拓には女性が必要」ということで、水戸光子にも来てくれとの手紙が来てハッピーエンド。
勿論、この移住劇の結果は、悲劇になることは誰も予想していなかったのだ。
衛星劇場

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