『闇を裂く一発』

朝、テレビで放映しているのを途中から見たが、結構面白い。
ライフル射撃でオリンピック候補(なんとメキシコ五輪)の刑事峰岸隆之介が、殺人犯の佐藤允を追い詰めて殺すまでの話。
脚本が菊島隆三で、若い刑事の峰岸が、中年の刑事露口茂に教えられていくストーリーなので、黒澤明の『野良犬』を思い出すが、さすがに良くできている。

面白いのは、最後犯人が金の受け渡し場所として、北区千住の東京スタジアムを指定する。
東京(現ロッテ)と阪急戦で、投手は坂井と梶本である。
両投手は結構いい投手で、この1968年も10勝以上をあげている。
映画のバックで、東京球場が見えるのは、下町の勤労青少年映画『見上げてごらん夜の星を』などがあるが、球場そのものが舞台になっているのは珍しい。
東京球場のオーナーが、大映の永田雅一だったからできたこと。

試合の途中で、選手交代があり、スコア・ボード係りが選手を間違えて出す。
と、球場にいた刑事が叫ぶ。
「あのおっさんは大ベテランで、監督の考えを分かっているので、直ぐに交代選手の看板を出すのに間違えるはずはねえんだがな。
あっ、あれはサインだ、あそこにいるんだ!」
スコア・ボードの部屋に佐藤允はいて、3人の係員を脅かしているのだ。
3人は、樋浦勉と平泉征、もう一人のベテラン職員は誰かわからなかったが、調べると文学座の今福正雄だった。
勿論、ラストは暗闇の中の射撃戦で、峰岸が佐藤を撃ち殺す。
峰岸は、メキシコは諦めて、次のオリンピックを目指すことを教官の高橋悦史に告げる。

峰岸が、大映でハードボイルド作品に出たシリーズは、それなりに当たったらしく、出獄シリーズになり、私も森一生監督の『出獄四八時間』を見たことがあるが、それはモノクロだった。
峰岸は、いい男だがどこか暗くて、人気はなかったようで、東宝から大映、さらにテレビと活躍したが、安住した感じがないままに若くして死んだ。
彼の作品で一番は、東陽一監督のATG作品『サード』での、女子高生の森下愛子をラブホテルでのセックスで悶絶させてしまう、黒フンドシ姿のヤクザにちがいない。
私はその趣味はないが、妙に興奮した。
日本映画専門チャンネル

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