『グラン・トリノ』

クリント・イーストウッド監督、主演の2006年の映画、アメリカ中西部の小さな町の話。

イースト・ウッドの妻の葬儀が教会で行われ、家でパーティーが開かれる。

二人の息子とは疎遠で、ひとり暮らしになる父親の今後を息子たちは心配し、老人ホームをすすめるが、何事も自分でやるイーストウッドは断り、一人で生きてゆく。

隣家は、アジア人の家で、相互の生活習慣の違いで、衝突が起きる。

実は、イーストウッドも、ポーランドからの移民の子で、町にはアイルランド、イタリア系なども多い。中西部は、20世紀初頭に移民してきた東欧やアイルランドの移民が多いのである。彼は、朝鮮戦争に従軍した後、フォードの工場で働き、それを誇りにしてきたが、息子は日本車の代理店をやっている。

グラン・トリノと言うのは、フォードが1970年代に作った名車だそうだが、車に興味のない私は知らなかった。

イーストウッドも、実際に朝鮮戦争に行ったことがあるようだ。

イーストウッドは、隣家の連中を避けているが、若い女の子を切っ掛けに、次第に隣の連中と付き合うようになる。

彼らは、中国南部、タイ、ベトナム等に住むモン族で、ベトナム戦争以後に移民してきたという。

大家族で、一家、親族がいつも和気あいあいとやっているのが、イーストウッドの家族の冷淡さに比べ幸福に見えるのは、皮肉である。

そこに女の子の弟に引きこもり少年がいて、イーストウッドは、彼に仕事のやり方を教え、他人種との付き合い方、女性の誘い方等のアメリカ社会での生き方を教える。

渥美清の『男はつらいよ』の最後の方に、甥っ子の吉岡秀隆が後藤久美子が好きになり、吉岡へ恋愛指南をする1本があったが、これはそのイーストウッド版である。自立の仕方の教育である。個人主義のアメリカでは、自分でなんでもしなければいけないことを教える。

最後は、モン族の中のマフィア一味に傷つけられた姉弟の仕返しに、イーストウッドは、一人で彼らのところに出かけてゆく。

ラストは書かないが、大変立派な態度で終わる。

この映画の意味はなんだろうか。

アメリカもアジアを理解してきちんと付き合えということだが、アジア人にも良いアジア人と悪いアジア人がいるぞ、という警告だろうか。

それにしても、クリント・イーストウッドは、かっこいい。

この時、彼は80歳を越えていたのだから、日本の高倉健さんには、もっと頑張ってもらわなくてはならない。

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