『80日間世界一周』

1950年代に、テレビの攻勢に対し、アメリカでは大型映画で対抗し、シネマスコープをはじめ、シネラマ、ビスタビジョンなど沢山あったが、その中一つのトッドAOで作られた作品。日本では、帝劇などの上映設備のある一部の劇場でしか公開されなかったようで、見たことがなかった。

原作は、ジューヌベルヌの小説、19世紀の末、イギリスの富豪のデビット・ニーブンが、クラブの仲間との間で「80日間で世界を廻れるか」を賭けて召使一人を連れて世界を回る観光映画であるが、大英帝国植民地めぐりとも言える。

ロンドンからフランス行き、そこで得た気球でスペインに飛び、快速船でスエズに。インドを鉄道で横断してタイから香港、横浜に上陸してサンフランシスコに渡り、アメリカを大陸横断鉄道で東海岸に行き、オンボロ船でイギリスに戻り、日付変更線のマジックで賭けに勝ってめでたしめでたし。

ともかく大富豪なので、交通手段に困ると、すぐにカバンから現金を出してしまうというので、ドラマとしてのひねりがどこにもない。

さらに全体に他愛のない展開だが、インド、タイ、日本のアジア人の描き方になると相当にひどいと感じざるを得ない。

インドの宗教的習慣から死んだ夫と一緒に葬られそうになる若妻を火葬から救い出すなど民族的偏見以外の何者でもない。だが、その若妻は、シャーリー・マクレーンだった。

日本で言えば鎌倉の大仏はまだしも、平安神宮の人垣と屋台の出店の奇妙な食べ物、サーカス小屋での怪しげな大奇術となると、目茶苦茶、出鱈目というしかない。

その意味で、近年の『ラスト・サムライ』の時代考証などは、大したものだと評価できる。

それが、ハリウッドの日本観進歩の50年ということだろうか。

イマジカBS

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