『グランド・ホテル』

アメリカの名作好きのNHKがやっと放映した名作。

1930年代にサイレントからトーキーになり、映画が大きく変わったことの一つが筋書きの複雑さでる。

それまでの単純なアクション映画やコメディー作品に代わって、舞台的なセリフ劇や心理劇が出てきた中の典型の一つ。

一つの場所、ベルリンのグランドホテルで動く様々な階層の人物が行き来する。

主役は、落ち目のバレリーナのグレタ・ガルボで、確かに美しいが、当時やや人気が落ちつつあった彼女の実像を上手く重ねている。

その部屋に忍び入り、偶然にも恋に落ちてしまうニセ紳士は、ジョン・バリモア、若手女優でジョーン・クロフォードが出ている。

このスタイルは多くのスターを出すにのも良いシステムであり、豪華顔見世的映画によく使われることになる。

筋は、グランドホテル様式と言われまでになったもので、『タワーリング・インフェルノ』などのパニックもの、乗物では、『駅馬車』や「「エアーポート」シリーズになる。

日本では山中貞雄が『国定忠治』にしたのは有名だろう。

「エアーポート」シリーズはなかなか面白い映画で、最初の『大空港』は、ある高度以下に低下すると爆発する爆弾を仕掛けられた飛行機。

だが、なんとアメリカのある州に高高度の空港があり、そこに無事着くのである。

『エアーポート75』もスチュアデスのカレン・ブラックが操縦するスリルと、寄目の彼女の演技の頑張りで大変面白かった。

この作品で、おかしいのは、金持ちの資本家がインチキとして最後は殺人罪を着せられることで、松竹ならずともアメリカでも金持ちは悪人だったのだ。

現在、話題になっている「資産家夫婦殺人事件」の報道に、どことなくざまあ見やがれ的な心理が内在しているのにも似ているのかも知れない。

それは、西欧では映画の観客の大部分が、社会の貧しい階層の人々だったからにほかならない。

クラシック公演、オペラやバレー、ストレート・プレーなどに鑑賞に行けない貧困層にとっての最大の娯楽が映画だった。

そして、最後若いカップルは、ベルリンからパリのグランドホテル目指して旅立ち、ホテルのカウンターの男にも子供が生まれるハッピーエンド。

NHKBS

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コメント

  1. 名無しのごん子 より:

    ん?
    「グランド・ホテル」「大空港」は「国定忠治」は何の似通っている所はないと感じますが。指田さん、「国定忠治」と「グランド・ホテル」等の共通点は何ですか?
    その辺りをもう少し詳しく私は知りたい。

  2. さすらい日乗 より:

    「三一致の法則」です
    映画『グランド・ホテル』自体が必ずしも厳密にやっている訳ではありませんが、「グランド・ホテル形式」では、場所、時間、登場人物が同じで、変化しない「三一致の法則」で出来ていて、3作品の構造も同じです。
    テーマは、それぞれでしょうが。

    「三一致の法則」は、フランス古典劇のラシーヌが代表的で、彼の作品では、この法則が厳密に守られていています。
    ある場所でで同じ人物間でドラマが進行し、最後はたった一日間で悲劇に終わります。

    その逆が、そうした要素が時として守られずに飛躍してしまうこともあるシェークスピアです。

    どちらが良いということはなく、構造の差異性の問題です。