『男』

1943年、東宝で渡辺邦男が監督した岡譲二主演の作品。

岡は、山の中でトンネル工事の現場事務所の所長をしていて、彼の片腕的な工事人夫の頭が丸山定夫。

岡には小学生の一人娘がいて、東京の両親に預けている。

トンネル工事で、ついには断層で水が出て岡も中に閉じ込められるが、無事救出されるのがクライマックス。

「戦場のように全員が一致して事に当たれ」という銃後の戦いの意義を謳う戦意高揚映画である。

言って見れば、1960年代末に石原裕次郎が三船敏郎の協力を得て作った、関電の黒四ダム建設を描いた『黒部の太陽』の先駆的映画である。

そこに、岡を慕う二人の女性、山根寿子と里見藍子が関わって来るが、年齢的に山根が岡に結ばれるようになり、里見は、また新たに出発して行くことになる。

里見は、原節子と久我美子を足して二で割ったようなルックスで、この時期の東宝作品にはかなり出ている女優である。

音楽は服部正、特殊技術は、円谷英二。

渡辺邦男は、新東宝で作った『明治天皇と日露大戦争』でアナクロニズムのように言われるが、意外にも西欧的であり、センスは泥臭くはない。

衛星劇場

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