『血風ロック』

内田栄一がシナリオを書き、流山児祥が1985年に監督した映画、存在は知っていたが、見たことはなく、蒲田の安売りビデオ店で売っていたもの。

大映製作だが、こんなものや、黒澤明の『まあだだよ』などを作っていれば、潰れるのが当然という見本の作品。

塩野谷正幸が、新宿の銀行に押し入って支店長を脅して店を閉めさせて、と言えば大阪の三菱銀行での梅川事件からヒントを得たことがすぐに分かる話。

高橋伴明にもATGの『TATOO あり』があり、それなりに面白かったが、こちらには少しも面白いところはない。

やたらに塩野谷がいきがっているだけで、少しも画面は弾まない。

こんな映画をどう配給したか、こちらが心配になるが、ロマンポルノの末期だったので、その系列で公開したのだろうか、結構セックスシーンがある。

いきなり、銀行員の美加理のダンスシーンになったり、塩野谷の兄貴分で宇崎竜童が出てきたりと構成もデタラメ。

因みに、高橋伴明の作品の主演は、宇崎竜堂だったが、この頃、宇崎は盛んに映画を志向していたようだ。

最後は、塩野谷と手下の有薗有紀以外は、全部撃ち殺されしまう。

ともかくひどい映画だが、不思議なことに余り嫌な気分にならないのは、監督の流山児祥の人徳と言うべきだろうか。

この人、40年近くも芝居をやっているが、いつ見ても劇はひどく、役者たちの演技は下手である。

これは一つの才能というべきだと私は思っているが。

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