中北千枝子と佐田豊

昔の日本映画を見る喜びの一つに脇役が充実していることがある。東宝の代表的な脇役と言えば、中北千枝子と佐田豊だろう。
中北は、黒澤明の『素晴らしき日曜日』では主演(恋人から体を求められるシーンは今見ても生々しい)なので、厳密には脇役と言えないかもしれないが、成瀬巳喜男の作品には良い脇役で出てくる。
佐田豊も戦後の東宝作品に数多く出ていて、成瀬の名作『流れる』では車屋だが、一番有名なのは黒澤明の『天国と地獄』の社長(三船敏郎)の運転手だろう。取り違えられる子供は、小津の『お早う』にも出た名子役・島津雅彦と江木・フォーリーブス・俊夫。
彼ら脇役は、当時は専属契約で会社に専属した、言ってみればサラーリーマン俳優だったようだ。こうし態勢が、各社の独自のカラーを決めていたのである。

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コメント

  1. КРАСНАЯ СОСНА より:

    もし中北千枝子が黒澤明によって『素晴らしき日曜日』で主役に、佐田豊が『天国と地獄』で運転手に抜擢されていなかったら、恐らくファンはそれぞれの顔を認識できても、名前は覚えて貰えなかったであろう(特に佐田豊は)。

    佐田豊は平凡すぎるほど平凡な容貌(「佐田豊」と言う芸名自体が平々凡々の極み)をしていたのが、役作り(小市民的な端役がほとんど)の上でかえって幸いした。

    この映画では三船敏郎、仲代達矢、三橋 達也、香川京子らの個性派名優にまじって、黒澤は反対にできるだけ目立たない俳優を起用したと思われる。

    『天国と地獄』での佐田の巧演は100%認めるが、個人的には、佐田豊があの青木という運転手役に文句なくbestであったかというと少し首をひねる。

    黒澤も配役に熟考に熟考を重ねたのだろうが、別の俳優がいなかったのだろうか。

    『天国と地獄』をリアルタイムで見たときの衝撃は今でも忘れられません。とにかく興奮して、座席にじっと座ってみていられないのですから。

    権藤邸の跡地を巡りに横浜まで行ったくらいで、この映画はその後何度となく台詞を暗記してしまうほど見返していますが、見るたびに腑に落ちないシーンが一カ所あります(富士山の冠雪ではありません)。

    それは刑事たち(木村功ら)が犯人らしき男を暴き出そうと大学病院を訪れる場面。

    犯人(山﨑 努)が階段の手すりに置いた時、彼の手の傷に気がついた一人の刑事が慌てて、子供の描いた犯人の図画像を拡げ、その傷跡を「これだ!」とばかり指さすシーン。

    何故、刑事はその絵を病院までわざわざ持参していったのでしょうか。
    照合写真のつもりだったのでしょうか。

    普通はそのような証拠物件、参考品は捜査本部に保管されている物で、捜査員でも持ち出しは禁止だと思いますが。

    あれほど緻密に構成された天才たちによる完璧シナリオでありながら、小生にはどうしてもこの部分が納得がいきません。

    是非とも黒澤明研究家の「さすらい」様のご意見を頂きたいものです。

    最後に、犯人(山﨑 努)の役は最初はミッキー・カーチスだったというのは本当でしょうか。

    余談ですが、佐田豊さんはご存命で106歳、まだまだこれからもお元気で、是非とも日本長寿男性No1になっていただきたい。

  2. はい、その通りです。
    東宝の男優では、加藤茂雄さんも、生家の鎌倉にいて漁師をやっていて今もお元気です。若林映子さんもお元気なようで、以前阿佐ヶ谷ラピュタで見かけたことがあります。