『黄色い風土』

神保町シアターで行われている松本清張特集は、実はほとんど見ているので、面白いのもあるがじっと我慢している。

この石井輝男がニュー東映で作ったのは見ていないと思い見に行く。

週刊誌の記者の鶴田浩二は、作家柳永二郎の原稿を取りに行く熱海行の列車で不思議な人間に気がつく。

新婚旅行らしいのに、見送りのない男女、さらにカトレアの匂いのする美女佐久間良子が、鶴田の隣の席につく。

こうした推理の発端は、異常とも見えるが、それなくしては、清張のドラマは始まらない。

熱海のホテルで、部屋を間違えられたり、列車にいた不審な男女の内、男が錦ヶ浦で投身自殺する。

そこから、印刷屋の火事、東京の柳永二郎の家に行くと、近くの路地から佐久間が出てくるなど、不審はさらに倍加する。

さすがに石井輝男なので、テンポは早く、画面は実にシャープでどんどん話に引き込まれてしまう。

そして、途中で熱海にいる通信員の春日俊二が、本当は怪しいのでは、と鶴田が思うところで、この映画も前に見たことがあることを思い出した。

いつもは善人の脇役が多い春日俊二が実は悪人の一味という本筋を思い出したのだ。

春日は、戦前の諜報機関の生き残りで、偽札印刷能力を活かしてやミドル、さらに日本円の偽札作りをやっていた一味の首領だった。

最後、東富士演習場での爆弾試射試験を利用し、鶴田を着弾地に置き去りにして殺そうとするが、逆に鶴田は佐久間良子と共に逃げ、春日は爆死する。

だが、この推理映画は、少々テンポが早すぎて、展開についていけず、謎解きもよく分からないところがある。

推理、サスペンス映画は、観客の推理の進行状況と同調していることがベストだが、これは映画の方が少し早すぎる感じだった。

推理映画は、やはり上手く作るのが難しいが、それにしても鶴田浩二は二枚目である。

神保町シアター

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