『ロマンス祭』

1958年、江利チエミ、雪村いずみを主演に宝塚映画で作られた音楽喜劇、脚本は須崎勝也、監督は杉江敏男。

共演は、宝田明と山田真二の他、有島一郎、清川虹子、花菱アチャコ、柳家金語楼などの喜劇人、さらにフランク・永井やフランキー堺らのジャズメンも出る。

ちょうどテレビ放送が始まった時代で、中華料理屋の出前持ちのチエミが、出前に出て、そのままテレビの「のど自慢」番組に出る。

テレビタワーと局舎が写るが、麹町にあった日本テレビと日本テレビタワーである。

日本テレビは、民放では最初のテレビ局だったので、自社タワーから電波を出していて、東京タワーが出来てもすぐに移行せず、映りの悪い地域もあった。

特に東京の西部地区の写りが悪く、出来の鈍い人間を「4チャンネル」と呼ぶこともあり、ついには1970年に東京タワーに移行した。

さて、悪い噂で東京にいられなくなったトランペッターの有島一郎と店をクビになった江利チエミは、大阪に行く。

列車の中で、家出してきた雪村いずみと出会うが、彼女はアチャコが社長の化粧品会社の令嬢で、見合いを押し付けられているのに反発したのだ。

見合いの相手が三木のり平で大笑い。

雪村の友達が峰京子で、二人は同じ男の宝田明に惚れている。

昔、面倒を見たことがあり、今は『有楽町で会いましょう』で大スターになったフランク・永井の好意で、チエミはキャバレー歌手になれる。

その前に、チエミが有島と町を流している時に、因縁をつけてくるヤクザが大村崑と茶川一郎だが、大村はまだ例のメガネはつけていない。

最後、大阪でリサイタルを成功させ、東京にチエミが上京するところでエンドマークだが、この富士山を背景にした列車のシーンは特撮のようだ。

ここでは、若水ヤエ子も出てくるが、大変にうまい役者の使い方である。

監督の杉江敏男は、ひばり・チエミ・いずみの「三人娘もの」など娯楽映画が多いが、よく見るととても上手く、崔洋一などはよく勉強すべきだろう。

それもそのはず杉江は、戦時中は黒澤明の助監督を務め、ヒチコックが好きというだけあり、脚本も映像も大変的確なのである。

阿佐ヶ谷ラピュタ

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