反知性主義の時代

数年前に、池上彰のテレビ番組で、日本の近代史についての回があった。

そのとき、太平洋戦争についての問題があった。

それは、「太平洋戦争で日本が戦った相手国はどこか」というもので、

1 ドイツ・イタリア 2 アメリカ・イギリス・フランス・オランダ・中国 だった。

その時、藤本美貴は、1のドイツ・イタリアと答え、

「だって日本とアメリカは仲が良いではないですか」で、これには唖然とした。

結果と原因が逆である。

現在、日本がアメリカと仲良くしているのは、日本がアメリカに戦争で負けたからである。

このように今の日本を覆っているのは、一種の反知性主義である。

ただの無知に過ぎないタレントを、おバカキャラとか天然ボケとして持ち上げるばかばかしさ。

かつて大宅壮一は、テレビ時代を「一億総白痴化」と言ったが、まさに今や完全に白痴化している。

この気分は、大阪市の橋下徹市長の人気にも通じている。

あのやんちゃ坊や的キャラクターの持つ、言動の明瞭さは、深い思考や熟慮のないことの結果にすぎないが、その無謀さはむしろ快く響く。

前回の市長選挙の時、反橋下陣営に、香山リカや山口二郎らの大学教授が付き、広く応援したことも最悪だった。

中学、高校の教師、ひいては教育委員会に反感を持っている、フリーターやアルバイトの人間にとって、自分が学歴社会で上手くいかなかったのは、こうした教育の既得権益者の性だった。

英語の、数学の教師が嫌いだったので、勉強が嫌いになり、そのために受験がうまくいかなかった。その責任は教師にある。

そいつらを橋下徹は、打ち破ってくれると期待したのだろう。

だが、言うまでもなく、橋下や日本維新の会は、所謂「新自由主義者」であり、格差を肯定し、非正規雇用者は容赦なく切り捨てる側である。

自分の首を絞める権力者に票を投じる、なんという矛盾であろう。

世の中は、そうしたものだと言えばそれまでだが。

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