甦る1960年代 ドナルド・リチー作品

先日、亡くなられたアメリカ人の映画評論家ドナルド・リチー氏は、1960年代は、日本におけるアングラ自主映画の監督の一人だった。

そのことはよく知っていたが、実際に作品を見たことはなかった。

イメージフォーラム映画祭でまとめて上映されるので、新宿のパークタワーホールに行く。

元は東京ガスのガスタンクがあったところで、新宿駅からは遠いので、東横線、副都心線、京王新線を乗り継いで初台に出て歩く。

上映されたのは、『戦争ごっこ』など6本。

中では、『死んだ少年』『のぞき物語』『五つの哲学的童話』『シーベル』が面白かった。

自主映画は、商業的映画とは異なり、作者自身の想いと強く結びついているので、表現されたことが見るものにはよく理解できないことがある。

彼の作品では、後期に属する4本には、際立った特徴がある。

それは、反社会性、反道徳性、そして死である。

彼が同性愛者だったのは有名だが、この3本には、いずれも男性の裸体、あるいは顔の美しさが出てくる。

特に『シーベル』では、谷中の墓地で撮影したとのことだが、裸体の男性に様々な苦行を加える。

その残虐性は、残酷を越えて、お尻にお灸かロウソクを差して火を点けるのに至っては、爆笑ものだった。

自主映画、アングラ映画は、多くは眼高手低になりがちだが、ここにはそれはない。

リチー氏の批評性の高さによるものだろう。

また、『のぞき物語』には、新橋名画座という当時ピンク映画を上映していた映画館の映像が出てくる。

今や、絶滅危惧種となったピンク映画館の貴重な映像だろう。

パークタワーホール

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コメント

  1. PineWood より:

    身体表現
    井筒和幸監督特集がフイルムセンターでスタートして記録映画(足之裏から冥王まで)を見ました。男たちの身体表現という側面でドナルド・リチー監督の8U+3349の実験映画を思い出した。深作欣二監督の(仁義なき戦い)のパロデイシーンとか厳寒の中の過激なストリップショーみたいなシーンも出てくる。だが、通天閣界隈の野外劇のドキュメントを天井から撮ったりカメラワークは流麗で、ソークロフ監督作品みたいに凝った構図もある。群像劇映画での緊張したヒリヒリ感は井筒和生名義のこの映画にすでにあった

  2. 私も見ました
    昨日、見ましたが、公演も映画もあまり感心しませんでしたが、大阪ではこんなことまでやっていたのかと思いました。