戦前と戦後の日本社会の違い

先日見た成瀬巳喜男の『限りなき舗道』もそうだが、戦前と戦後の日本の社会は根本的に異なる社会である。

簡単に言えば、戦前、特に昭和初期の日本は、完全な自由主義経済の社会だった。

そこでは、国の統制はほとんどなく、福祉政策も存在せず、大きな格差が存在する、しかも封建的な家族制度が厳然としてある社会だった。

具体的には、橘木俊詔の『日本の経済格差』(岩波新書)等を参照してほしいが、1930年代工場の場長と一般工員の賃金格差は、17.27倍だったという。

この上に、ボーナスもあったのだから、その格差は今と比較にならない。現在では、せいぜい3,4倍くらいだろう。

御厨貴のオーラル・ヒストリーの本でも、戦前の三井物産横浜支店のボーナスのことが書かれていた。

それによると、各支店に配布されるボーナスの総額のまず半分を支店長が取る。

残り半分の半分、つまり全体の4分の1を次長がもらう、そして残りの4分の1をその他の社員で分配したというのである。

この頃、ボーナス支給の対象となる正社員がどのくらいいたのか分からないが、せいぜい20人くらいだろう。

この4分の1を20人で分けるのと、総額の半分をもらうのと、どのくらいの差があったのか。

戦前の日本というものは、そうした社会だったのである。

安倍晋三首相は、そうした格差社会に日本を戻したいのだろうか、大いに疑問を感じる。

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