『欲望の血がしたたる』

若松孝二は、フィルムセンターが嫌いだったそうで、自分からは寄贈しなかったので、センターが所有する数少ない若松監督作品。

1965年と「初期の傑作」とパンフにあったが、『情事の履歴書』など、もっと良い作品はあったと思うがないのだろうか。

ただ今見て珍しいのは、上野山功一が、敵役で出ているところだろうか。上野山は、日活の俳優で、アクション映画の敵役で、後には大映にも出ていた。

この時期は、急速に邦画5社がダメになり、ピンク映画が全盛だった時代で、その流れに沿って上野山も出たのだろう。

新宿国際も閉鎖されて、今や絶滅危惧種のピンク映画だが、1960年代は大変な勢いだったのだ。

話は、新妻と結婚した上野山が上高地に新婚旅行に行く。妻は、叶美智子という女優のようだ。

とその初夜に部屋に電話がかかってきて、愛人の香取環がホテルのロビーに来ている。

香取は、上野山が入社し課長に出世した証券会社の社長の愛人で、彼女の助言で出世できたのである。後に異常に太る香取だが、まだ普通の体型である。

この上野山は悪い男で、友人で画家生方健の妹を誘惑し、彼女に会社の秘密書類を盗み出させて、それで証券会社に入社したのである。

妹役は、志摩みはるという女優のようだ。そして彼の裏切りで、彼女は大正池で自殺したのである。

その裏切りを追求する画家の男の行動で映画は進行する。

最後、叶は上野山の悪事を知り、上野山を毒殺するが、ここまでは予想どおりだったが、次に生方も刺殺するには驚く。

ピンク映画だが、露出度はきわめて低く、着物を着てセックスしているのだから、非常に異常である。当時はきわめて映倫の審査が厳しかったのである。

日活がロマンポルノを開始するのは、この6年後の1971年のことである。

フィルムセンター

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