『テザ 慟哭の大地』

この数年間に見た外国映画で一番感動した作品である。

1990年、エチオピアの農村に中年の男アンベルブルが戻ってくる。

出迎えるのは年老いた母親と弟、男は村一番の秀才で、長く外国に留学していた。

片足が不自由で、また記憶喪失で過去が思い出せないが、次第にわかってくる。

祈祷師のところに行き、冷水を浴びせられ、そのショックで記憶が戻ってくる。

1970年代、彼は東ドイツに留学し、医学を学んでいたが、そこではベトナム反戦運動の高まりから、政治運動に参加していくようになる。

そして1974年にエチオピアで革命が起き、皇帝ハイラ・セラシエが退位し、新政権ができ、外国にいた留学生たちも母国に戻る。

アンベルブルも、エチオピアに帰国し医学研究所で働くことになる。

だが、メンギツス軍事政権のとる社会主義政策の結果、「反知識人運動」があり、研究所の労働者から反革命と糾弾され、裁判にかけられてしまう。

中国の文化大革命の中での「反右派運動」とよく似ている。

同じ研究所の幹部になっていた友人も所内の過激派に殺され、アンベルブルは、東ドイツに逃れる。

そこはエチオピアからの亡命者が多数いたが、彼はそこで、白人の若者の暴徒によって襲われ、片足が不自由になる。

そして彼はエチオピアに戻ってきたが、1990年代は、軍事政権と反政府派が激しく戦っている時代で、双方の兵隊が村の若者を狩っている時だった。

最後、彼は村の学校と言っても(ただの木造の小屋だが)、そこで子供たちに勉強を教えることにする。

この映画の見所の一つは音楽で、その不思議な日本の歌謡曲のような曲が何度も出てくる。

それは、ハイラ・セラシエが日本びいきで、何度も来日していて、歌謡曲が好きになったので、エチオピアに「輸入」させたのが始まりと言われている。

私は、持っているCDの中で一番奇妙な音楽として、エチオピア国立楽団のものがあり愛聴しているが、この映画ではふんだんに出てきて最高だった。

例えて言えば、沢島忠の監督、中村錦之助主演の『一心太助』シリーズのような感じのものであるといえば理解できるだろうか。

オーディトリウム渋谷

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

コメント

  1. シーリア より:

    よい情報ありがとうございます
    今、「美」というものに関して貪欲になってありとあらゆるものを見ようと行こうと思いいます。私はマツコデラックスみたいな芸術観念が病的に欠如した人間にだけは絶対なりたくないので、コレは観に行きます。

  2. 映画館ではやっていません
    シネマ・アフリカでの上映はもう終わりました。
    でも、紀伊国屋でDVDを売っているはずですから、それでご覧下さい。
    私はすぐに買いました。