帝国軍人が全員長髪の芝居 『ぞめきが消えた夏』

大日本帝国軍人が全員長髪の芝居を初めて見た。アトリエエッジの『ぞめきが消えた夏』

友人の知り合いの女優が出ているからと券を買わされたので見に行く。

話は簡単で、徳島で阿波踊りをやっている祖父さんが実は戦争中グアム島で、悲惨な戦闘に参加していたというもので、「ぞめき」は、阿波踊の伴奏音楽。

ぞめきが消えた夏とは、戦時中は「阿波踊りとは不謹慎」とのことで中止させられていたこと。

さて、戦時中のグアム島の大日本帝国陸軍だが、この部隊の兵隊全員が今時の長髪なのである。

友人に聞くと、「長い間の戦闘で髪がボサボサになったのではないか」とのことだったが、その割にはヒゲは伸びておらず、服も普通でボロボロになっていない。

調べるとグアム島での日米両軍の戦闘は、1944年7月21日から8月10日までであり、到底髪の毛が長髪になるほどの長期間ではない。

さらに、彼らが持っている銃は、38式歩兵銃だろうが、まるでも木の切れっ端のように軽々と扱う。

最後は、ヤクザ風の兵士は、片手でこれを撃つのだから凄い。

勝新太郎主演の『兵隊やくざ』の暴れ者、大宮貴三郎すら成し得なかった大技である!

また、通信用の無線機も出てくるが、まるでおばあさんがリックを背負って歩くように軽々と歩行する。

軍用の無線機は、蓄電池で動くもので、多量の液体が入っていて異常に重いものだったと記憶しているが、どうしたことだろうか。

たとえ木銃であろうとも、その重さを感じて演技するのが、俳優の演技術の初歩の初歩だと思うが、それすらない。

1970年代に日活が『戦争と人間』を作り、その時軍事指導がスタッフにあり、いつもは悪役の木島一郎だったが、ここにも出てきてもらう必要があった。

台詞「大吟醸酒が飲みたかった」にもびっくり、吟造酒の名称が一般化したのは、昭和40年代で、戦時中は「特級酒」のはず。

ともかく恐るべき芝居だったが、最後は戦争反対を謳いながら、なんと日本万歳、靖国神社賛成になってしまう。

反戦愛国なのだが、アメリカ軍の駐留はどのように考えるのかお聞きしたくなった。

平日の昼間なのにほぼ満員、事情を聞くと強力なノルマ制らしい。

これって、ほとんどブラック企業?

知り合いの女優は、大変な美人だった。

怒りと唖然とした気分で都内をさすらい、最後はいつもの北品川で飲んで帰る。

シアター・サンモール

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