『喜劇・一発大必勝』

フィルムセンターの山田洋次特集で『喜劇・一発必勝』を見るが、先日の『喜劇・一発大必勝』よりは遥かに面白かった。

ハナ肇は、大学生の身でありながら女を作り、父親の加東大介に勘当されて実家の旅館を出る。

一年後、店頭に若い女が来て、「赤ん坊はハナ肇の子です」と置いていく。

10年後、母親の露原千草の1周忌に突然にハナが現れる。

彼は、温泉を掘るんだと谷啓、桜井センリ、犬塚弘の3人を連れていて、街中を騒動に巻き込む。

貧苦の末にワライダケを食べて全員が病院に入院するなどのルーティンのギャグもあるのは、松竹としては仕方のないところだろ。

ロケ地は、栃木の小山市や栃木市らしく、田舎の町の風景が懐かしい。

最後は、温泉が出て、ハナ肇は、旅館を大レジャー・センターにして大成功する。

場所は、サマーランドだが、周辺には何もなく、山の端にぽつんと巨大な施設が建っている。

           

愚兄賢妹(ここではハナ肇と倍賞千恵子)、突然家に現れる男、田舎風の町で起こす騒動など、明らかに後の渥美清主演の『男はつらいよ』の原型である。

ここに欠けているのは、マドンナ役と日常的な笑いであり、それは渥美清と森川信によって担われることになる。

ここでは、それはまだ無理で、ワライダケのギャグなどで筋を繋ぐのは苦しいが、『男はつらいよ』では渥美清の演技の上手さで解決されることになる。

婆やが北林谷栄で、ハナ肇との漱石の『坊ちゃん』のような関係が面白い。

脚本は、山田と宮崎晃で、宮崎は松竹で結構良い脚本や映画も作っていたが、テレビに移り、映画を作る機会は与えられてないのは、残念なことであった。

フィルムセンター

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