こんな良い映画とは知らなかった 『残菊物語』

『残菊物語』と言えば、戦前の溝口健二監督、花柳章太郎主演のものが有名だが、これは1956年に大映で、カラー作品として作られたもの。

勿論、筋は同じだが、主演の長谷川一夫の相手役のお徳が淡島千影と、長谷川と対等に演じられるスターなので、徳の悲哀がよく出ていて、感動した。
溝口版のお徳は、森赫子と言う新派の地味な女優で、やや花柳の一人舞台の感があり、その辺の感じはかなり違う。
一つには、このときまだ溝口も花柳も生きていたので、長谷川一夫には、「溝口なにするものぞ」という意気込みがあったと思う。
彼は、『近松物語』では、さんざ溝口に叩かれて悔しい思いをしたはずなのだから。
だが、この映画、ひたすら耐えて、忍従の人生を生きていく女性、お徳の生き方を、今のフェミニズムはどのように思うのだろうか。
さて、この作品で、今もご存命なのは、浪花千恵子の娘を演じる中村玉緒と美術の西岡善信だけだろう。
フィルムセンター

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コメント

  1. なご壱 より:

    Unknown
    お徳の淡島千景の美しさは、絶品でした。特に鬼子母神での長谷川との逢瀬のシーンは、出色でした。また歌舞伎のシーンがふんだんに盛り込まれていたのは、よかったと思います。ラストの角座の親子獅子は素晴らしかったです。溝口作品も観ましたが、こちらの作品のほうが楽しめました。

  2. 昔の娯楽映画は
    昔の娯楽映画は、非常にレベルが高かったと思う。
    それは、娯楽映画とばかにされない意気込みがあったからだと思う。
    映画界を支えているのは、巨匠たちではなく、我々だというプライドがあったと思うのです、長谷川たちには。