『僕は天使じゃないよ』

あがた森魚が、脚本・監督・音楽もやった自主映画で、小規模に公開されたもので、初めて見た。
製作は芽瑠璃堂で、一時は渋谷、横浜等にいくつかレコード店を持っていたが、よほど儲かっていたのだろうか、今は店舗は1軒もないはずだが。
と書いたが、これは「芽瑠璃堂」ではなく「芽瑠懴堂」で、あがた森魚で、彼が『赤色エレジー』での儲けをつぎ込んだものだとのこと。
昨日、田口史人さんから教えてもらったので、ここに書いておく。
芽瑠璃堂と言えば、営業にシビアな店と聞いており、昔は渋谷の他、横浜の元町にもあったがすぐに閉鎖した。
閉店ことを藤田正さんに言うと、
「あそこはシビアな会社だから」と言っていたのに、それが絶対に儲からない映画製作になぜ手を出したのか不思議だったのだ。
理由が分かった。

林静一のマンガが原作で、映画の冒頭にはアニメも少し出てくる。
駆け出しのアニメター・あがたの一郎と恋人の幸子の貧乏生活が一応の筋だが、ドラマがほとんどなく、見ていてかなりつらい。
感じとしては、ほぼ同時期に公開されていた東宝の『神田川』の関根恵子と草刈正雄の同棲生活のようなものだが、こちらの方がよりリアルだが、少し貧乏すぎる感じもする。

ベルウッドをはじめフォーク系のアーチストの総出演で、大瀧詠一、山本コータロー、下田逸郎など。
プロの役者も、緑魔子、桃井かおり、大林丈史、三条泰子なども出ている。
岡本喜八と泉谷しげるが海辺でアニメーターのテストをするといったお遊びが多く、次第に真面目に見ている気がなくなってくるが、そう悪い感じはしない。
大瀧詠一の『びんぼう』などが聴けるのは貴重だが、大瀧とあがた、泉谷が同じ映画に出ているのが時代であり、面白い。

意外にも映画としての撮影はきちんとしていたが、これは助監督三輪道彦の力だと思う。
この人は、この時期の羽仁進、松本俊夫、市川崑らの非大手の映画のチーフ助監督を勤めていた人なので。
多分、新東宝系の人で、テレビ映画等もやっていた人だと思う。
それにしても、1970年代って、結構貧乏な時代だったんだなと思った。

川崎市民ミュージアム

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