『原色の蝶は見ていた』

フィルムセンターの増村保造特集で、見ていないものの1本なので行く。
見ていないはずで、テレビ朝日の「土曜ワイド劇場」として作られたもので、大映テレビ室と俳優座映画放送の製作。

原作が西村寿行なので、話はかなり乱暴だが、増村らしさは失われていない。
主人公は若い医者の夫婦・大和田伸也と由美かおる。
ある夜の宴会の帰り、銀行への接待酒で疲れた大和田に代わり免許を取得途中の由美が自宅近くで運転を代わる。
と突然女性が出てきて殺してしまう。轢殺したと言っているが、撥ねたのが正しいと思う。
大和田は、大事件だと女性の遺体を道路わきに運び、二人は車で逃走してしまう。
だが、それを木陰から見ている男がいた。
その夜、大和田の家に電話がかかって来て、事故を目撃したと言う。
そして、事件を目撃したので、由美に10万円を持って来させろと脅す。

大学の研究室の下働きの男火野正平で、研究室の助手の女性を誘い出して口説いたところ、
「あんたのような高卒の男が、大卒の私を口説くなんて」と馬鹿にされたので、乱暴したところ、車から飛び出して、大和田の車に轢かれたのである。
仕方なく、由美が喫茶店に行くと、当然のごとくホテルに連れて行かれてしまう。
それを繰り返した後、大和田は火野を殺害することを決意し実行する。
この辺の大和田夫妻の追いつめ方は、さすが増村で非常に面白い。
いつもの増村調の思い詰めた台詞回しで、大和田も由美も完全に増村調の芝居になっている。
だが、火野はさすがに増村に洗脳されなかったのか、シラケてだるい言い方で対応しているのがおかしい。

最後、大和田は、火野を由美かおるのベッドに誘わせ、彼が裸になったところで、筋肉弛緩剤を注射し、動けなくなったところで、裏庭に埋めてしまう。
そのとき、火野のポケットにあり、大和田との格闘で壊れたアンプルを何気なく捨ててしまう。

火野がいた研究室に、刑事の財津一郎が行くと、火野が不在で、蝶のフェロモンのアンプルを受け取ったままいなくなったと教授の武内了が大騒ぎしている。
財津が、大和田の家の裏庭に行くと大量の蝶が蝟集していた。
土を掘ると火野の死体があった。
この原色の蝶というのが異様で、大きなスズメバチにしか見えず笑えた。

この蝶は、このシーンだけではなく、由美かおるが悪いことをすると必ず彼女に見えるものになっていた。
女性は、悪いことをするとフェロモンが出るのだろうか、本当かな。
フィルムセンター

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コメント

  1. 池田稲次郎 より:

    Unknown
    増村映画の後期の作品では、役者達はなんであんな風になるんですかね・・・
    そりゃ、物語の枷で追い込んでいるのは分かります。
    とことんな演出家だったのも分かります。

    でも、若尾文子、原田美枝子だと、そんな枷を突き抜けて凛と存在しているんですよねえ・・・

    逆に、他の役者の仕事だと、いくら監督が気に入っていても(緑魔子さんや梶芽衣子さんでさえ)やっぱり増村芝居にしかなっていないというか・・・
    なんで皆んな、ああなるんでしょうねえ・・

    夫「俺のためにアイツと寝たのか! なんていい奥さんだ!!」
    ・・・・・や、ここは笑いましたけどね

    これ、「曽根崎」の頃に撮っているんですよねえ・・・

    ついでに私は「清作の妻」を私の映画体験の最高作だと思っています。(冗談抜きで)

  2. さすらい日乗 より:

    大いに笑えましたね
    なぜ増村調の台詞になってしまうのかは、役者に聞いてみないとわかりませんが、テレビの「赤いシリーズ」の宇津井健もそうでしたね。

    私は増村保造ファンなので、みな良いのですが、あえて最高作を上げれば、大谷直子が異常にきれいだったので、『やくざ絶唱』かな、同じ理由で『遊び』も非常に好きです。

  3. 池田稲次郎 より:

    Unknown
    「最高殊勲夫人」とか、どうですか?

    冒頭が《月にロケットをぶち込む時代になりました》ですよ!
    増村監督が「超~どアイドル商業映画」を撮っても、頭二つぐらい抜け出ている、と思います。
    あんなに魅力的な若尾文子作品て、他にあるのでしょうか?
    先日フィルムセンターで観たんですが、上映後に自然と拍手がおきました。凄いですよね。

    有名な「暖流」の台詞《二号でも情婦でも何でもいい!》とか、屈託の向こう側を出していたのか、監督の本性なのか・・・

    私は増村作品は大好きで、大きく影響を受けているのですが、初期の闊達な作品好きですね。