『惚れた強み』

水川淳三監督作品で、見たことがないので、見たがなんとも古臭い映画だった。
原案が北條秀治となっていたが、「こんな劇が北條にあったかな」と思う。
ラストで主人公の佐藤友美が車で店に突っ込み、石油を爆発させてしまうのは、明らかに演劇ではできない仕掛けなので、改変したということで原案なのだろうか。
北條は、「菊田天皇、北條法王」と言われたように大変にうるさい人だったので、改作するためのものだったのだろうか。
話は、至極詰まらないもので、地方の漁村(安房鴨川で撮影したらしい)で、町長の有島一郎には、愛人の佐藤友美がいて、町長選挙になるので、親分の代議士内田朝雄のご指示で彼女と手を切ることにする。
それをするのは、店の男の大辻司郎で、孤児を有島の石油店に拾われて育てられたので、店主丹下キヨ子の命令は絶対なのである。
有島は、店の養子で、丹下に頭が上がらない。彼らには女子大生の園江利子がいるが、彼女は地方新聞の記者藤田まこととできているなど、全員が「色ボケ」なのである。
この辺の色欲人間の描き方は、北條秀治らしいが、あまり強く出ていないのは、水川の資質が違うせいだろう。
ともかく1968年の製作なのに、筋、ギャグ、表現のすべてが古臭い。

佐藤友美も、この頃は松竹のスターの一人で大柄な美人だったが、すぐにテレビの悪女役専門になる。
城戸四郎の検閲を通過するには、仕方がなかったのかもしれないが、水川淳三も大変だったと同情した。
彼は、結構良い作品を作ったと記憶しているが。
水川は、前田陽一と同じく、大島渚の助監督で、大島が松竹大船を去った後は、大変だったのだろうなとあらためて思った。
阿佐ヶ谷ラピュタ

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