新人監督映画祭、初日、二日目

新人監督映画祭が昨日から始まり、初日には佐々部清監督の『六月塔の三姉妹』を見た。鹿児島市の老舗の菓子屋の三姉妹の話で、感じは昔の松竹大船調で、日常的で細かいやりとりの作品。佐々部監督は、横浜映画放送学院の出で、ここは今村昌平を代表に大船の監督、脚本家が多く先生としていたところなので、その流れがあるのだろうと思う。ただ、現在の話で、三姉妹は離婚、離婚協議中、不倫とそれぞれに問題を抱えているところが昔と違う。
最後はハッピーエンドになるが、そこに行く過程は、脚本の水谷龍二は上手い。
今日の最初は、三島に在住の監督木内一裕監督の『Sun Flower 向日葵』 2011年の3・11で三陸海岸で被害に合い、父親は死に、母親は新しい男と一緒になって取り残された少女が、祖母の住む伊豆修善寺にやってくる。
いつも向日葵を抱いているのでなにかと思うと、ひまわりが放射線を吸収すると信じてのこと。
祖母は、大きな旅館をやっているが、そこでは地熱発電所の計画があり、その反対運動の中心になっている。
彼女を脅しに来るヤクザが俳優座の中野誠也で、女将は片山真由美とは驚く。
いろいろあるが、地熱発電計画は後退し、少女は旅館で働くことになる。
だが、ラストシーン、三陸の土台だけになった無人で平面になった地を少女が歩いて行く。
この映像は、ドラマ云々を越えた衝撃力がある。2011年の冬に撮影したのだそうだ。
次は、阿部誠監督の『いつか見る富士山』で、富士山河口湖映画祭でシナリオグランプリ受賞作を映画化したもの。河口湖に住む女子高生の話で、
毎日見る富士山が鬱陶しい感覚が面白い。再ブレークする前の坂上忍が出ているのがおかしい。
東京に出て、「いつか富士山を喜びを持って見られるのか」
まあ、そういう見方かなとも思う。

午後は軽部進一監督の『歌舞伎町ハイスクール』を見る。これは那須真知子の脚本で、本来は那須博之監督にあてたもので、新宿歌舞伎町のヤクザの塩谷俊が、高校に入学して起こす大騒動で、非常に元気が良い。俳優も片岡愛之助など豪華。
さすがによくできているし、俳優もよく面白かったが、ラストが「夢落ち」なのが気になった。
全部門のスタアッフ、キャストによるご挨拶の後は、保坂延彦監督の『潜伏』
これは、オウム真理教の信者で、17年間逃亡生活をおくり、2012年に普通のサラリーマンの妻となっていたが、近親者の通報により逮捕された菊池直子と6年間途中で彼女を菊池と知りながら生活し、彼女を愛していた男との奇妙な生活を描く作品。
これをみると人間というのは、実に不可思議なものだと思う。
ラスト近くで、男からなぜオウムは地下鉄サリン事件をしたのか、と聞かれて菊池はこう言う。
「あれはアメリカが起こしたハルマゲドンで、あそこで日本人は死滅し、その後は幽霊として生きているのだ」と答える。
本当に信じられない発想である。
だが、いつまでも出てくるのを待っているよという男の心情は変わりないだろうと思う。
菊池直子の土屋貴子が非常によく、なんでこのレベルの作品がメジャーで公開されないのかと思う。要は、オウム関係の映画では、上映が難しく、テレビはさらにみ無理なのだろう。
保坂監督は、新人ではなく東宝で2本の長編『国士無双』と『父と子』が公開されている人だが、今は尚美学園大学で教えておられるようだ。
映画を折角作っても、上映できないというのは、大変な問題である。

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