吉田日出子はやはり病気だった

新聞に週刊誌の広告で「吉田日出子が病気」と出ていたので、夕方に隣のコンビニで週刊現代を買う。
外傷から来た脳の高次機能障害だと言う。
以前見た寺山修司原作の『上海異人娼館』について、私は次のように書いた。
体が非常に良くないのではと思ったが、やはりそうだった。

『上海異人娼館 チャイナ・ドール』

2012年11月08日 | 演劇

やはり脚本がきちんとしていないとだめということの典型の作品。
寺山修司が、『O嬢の物語』を原作に1981年に日仏合作で映画化したものを基に、プロジェクト・ニクスが劇化し、毬谷友子、中山ラビ、水嶋カンナ、蘭妖子、フラワー・メグらの他、特別出演格で吉田日出子までの豪華キャスト。
寺山の映画は、フランスのアナトール・ドーマンの製作で香港で作られ、寺山も非常に苦労したそうだが日本では全く当たらなかった。
唯一、撮影中に某男優が「日本映画史上最初の本番をした」という噂のみが残った。

構成は宇野亜喜良、演出は金守珍だが、結局画家宇野亜喜良の構成なので、各シーンをきれいに設定したのだろう、美しい場面もあるが、全体を貫くテーマや情感といったものがなく、これでは感動のしようがない。
1920年代の上海の娼館・春桃楼の話で、そこでの男女の恋愛、争い、殺人等の中に、寺山的な修辞と台詞が散りばめられているが、きわめて散漫で、一つの劇的イメージには結晶しない。
毬谷友子は、歌も演技も良いが、それ以上の感動には至らない。
第一、彼女は本質的に熱演型の演技で良さが出る女優なので、この劇のようにシラケた役は良くないのである。
このような素人宝塚のようなことをやっていては、プロジェクト・ニクスも、ファンには歓迎され、演じている人や関係者も楽しいだろうが、それ以上にはならないと思う。
もっと脚本をしっかりとすることを望みたい。
こういう雰囲気の劇は今は大変少ないので、貴重だとは思うのだから。

一つ気になったのは、吉田日出子のことで、ひどく太って見え、台詞はすべて録音。
ナマは『ウエルカム・シャンハイ』のみで、退場時には若い男に抱えられるようにしていたが、体が良くないのではないか。
彼女も68歳なので、もう若くはないのだが。

東京芸術劇場シアター・ウエスト

彼女の場合は、転んで怪我をしたことが原因だそうだが、脳梗塞でも起きることがあり、私が入院していた病院にも患者が一人いた。
その人は、身体的には全く正常だが、歩いていると方向が分からなくなるとのことだった。
その病院は、エレベーターから左右に振り分けて病室に向かう構造になっていたが、どちらかの方向に名前の頭文字らしい漢字が紙に書かれて貼ってあった。
一度、その方が歩いているのを見たことがあるが、エレベーターから降りてどちらに行って良いかわからず、左右を見て、その字を確認して歩き出すというものだった。
吉田日出子の場合は、記憶障害だそうで、すぐ直前の記憶がなくなってしまうので、役者の生命線というべき台詞を言うことができないのだそうである。
誠に信じがたいことだが、あのときの演技の様子では本当だろう。
なんとかしてご回復されることをお祈りしたい。

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