新人監督映画祭 最終日

一日中、中野にいるのも今日が最終日で、朝は湘南新宿ラインで横浜から。
朝は、大鶴義丹監督の『裸のいとこ』 南相馬のことで、東京のIT企業で成功した男が、故郷の南相馬に戻って来る。
そこで、佐々木心音はじめ様々な女性に遭い、結局は全員と性交する話だが、トークショーで大鶴は次のように言っていた。
「東北のドラマだと、災害に遭って苦しむ老婆とか、仕事を失っても立直る男などになる。でも被災地にも悪い奴、セックスばかりしている男はいるはずだ」と。大鶴の言いたいことはよくわかるが、上手く表現されているかは疑問。

続いて映画『青木ケ原』 青木ケ原近くでペンションを営む勝野洋は、偶然バー出会った男と、いつものように恒例の樹海の遺体搜索に行く。
その男は、風穴で自殺してしまい、その後彼の姿が、勝野の前に現れ、「まだ成仏できていないのか」と僧侶の津川雅彦に言われて、彼の生前の生活を調べることになる。
途中で、石原慎太郎が出てきたりするので、「あれっ」と思うが、次第に話は抹香臭くなり、ラストは難病に冒された愛人が、風穴で死んだので、後追い自殺だったことが分かる。
原作・製作石原慎太郎で、彼は意外にも仏教的心情であることが分かる。監督は新城卓で、前田亜紀、津川雅彦らも出演。

午後、世界のどこに出しても恥ずかしい監督と言われる河崎実監督の『電エースタロウ 電エース中野』 いつもの通りのおふざけ映画だが、満員の観客に大受けで実に楽しい上映。

夕方は、池島ゆたか監督が125本のピンク映画を離れて、初めての一般映画を作った『おやじ男優Z』 脱サラして始めたスナックが潰れた中年男は、AV男優求むの新聞広告でAV男優になる。
だが、それは女優に絡むのではなく、ラストで液を一斉に放つ「汁男」」(しるだん)と呼ばれる最下層のピンク俳優だった。
初めて、この「汁男」という言葉を知ったが、こういう具合でするのかと思った。
その汁男仲間3人が、下町のボロやで共同生活することになり、それぞれの過去も明かされるが、最後はそれぞれが、主演作品『おやじ男優X』『同Y』『同Z』を残して終わる、人情ものである。さすがにピンクとは言え大ベテラン監督なので、非常に面白かった。

公募シナリオの審査を徳永富彦、二階堂邦彦さんと共に行い、敦賀零さんの『贋作王』を受賞作に決める。
私は辻野正樹さんの『天国(上)を向いいて歩こう』を推したのだが、台詞が演劇的で映画的でないだとのことで『贋作王』になる。
辻野さんのシナリオは元が芝居なのとのことであり、皆納得する。

最後の表彰式には、新藤次郎審査委員長のほか、私も壇上に上がる。
コンペティションのグランプリは、斉藤俊道監督の『小春日和』で、長編としては40分とギリギリの長さだったが、新藤さんの評価は非常に高かった。
斉藤監督はアメリカで映画を勉強していて、今はこの作品を2時間にすることに挑んでいるとのことで、なかなか頼もしい感じだ。
準グランプリは、戸田彬弘監督の『ねこにみかん』
短編は、藤井悠輔監督の『COIN LANDRY』と大川祥吳監督の『サムライオペラ』になる。

実行委員長の大高正大によれば、「当初は50本くらいだろう」と予測していたが、200本の応募があり、それをDVDにコピーし審査委員に配るのだけでも大変だったとのこと。その他、招聘作品も含め147本が上映されたとのことで、この規模のものはそうないだろう。
表彰式も、ハプニングの連続で、大高は大いに謝っていたが、彼の人柄で、誰も文句を言う者はいなかっただろう。
今回は、中野区の関係者をはじめ、開会してからの異常な盛り上がり、大変な活気で大成功だった。
来年も開催するとのことなので、大いに期待したい。

              
             
             右から徳永富彦氏、二階堂邦彦氏、指田 左奥は大高委員長  写真提供 杉山司さん

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