『石の虚塔』 上原善広(新潮社) 誤りをおかすのが人間である!


ブログで、尾形修一さんが非常に評価されていたので読んだが、大変に面白かった。
2000年に起きた、旧石器時代の石器発掘の捏造事件、そこから遡って1947年の岩宿での相澤忠洋の岩宿遺跡の発見。
この岩宿から、捏造事件に至る日本の考古学の人物史というべきもので、石に魅せられた男たちの歴史。
相澤の他、彼を認知した二人のライバル学者の杉原壮介と芹沢長介、さらに共産党員で明治大学学長にまでなった戸沢充則など、多くの学者たちが入り乱れる。
彼らは、当初革新的な発見、発掘をするが、次第に保守化し、老いて最後は自説に固執するだけになる。
その果てに起きたのが、捏造事件だったようだ。
私は、この本で初めて知ったが、日本では考古学というのは、きわめて変わった分野で、所謂「素人の」考古学好き(考古ボーイ)が参入しているのだそうだ。
もちろん、どの分野でも最初は素人で、次第に学んで専門家になるものだが、考古学は、全国の考古学好きが、各地で発掘や発見を行い、その成果に依存してきたのだそうだ。
その典型が、相澤の岩宿遺跡の発見で、貧しい納豆売りの男が、日本にも旧石器時代があったことを証明する石器を見つけたのである。
もちろん、それは良いことだが、発見の後の検証がきちんと行われることが重要であるのは言うまでもない。
また、東大、京大、明治大学、東北大学と学閥の強いところなのだそうだ。

この本を読んで改めて痛感するのは、人間はいかに多くの誤りを犯すかということである。
恐らく、500万年の人類の歴史のほとんどは、すべて誤謬の歴史だったと言って良いのではないだろうか。
よくわれわれも反省して生きていかなければいけないなと思った。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする