『大地の侍』

1956年の東映作品、原作は本庄睦男の『石狩川』で、明治維新によって宮城の土地を奪われ北海道に移住した岩出山支藩の苦闘を描く作品。
原作は、戦前に新協劇団で劇化されたこともあるそうだが、非常に良くできていて、筋も大変面白い。
監督は、抒情的な作風で昔から私は好きだった佐伯清で、彼は後に『昭和残侠伝』を作ることになる。
冒頭、侍たちが踊っていて、何かと思うと、藩士加東大介と高千穂ひづるの結婚式の祝いと、迫り来る官軍に対する戦いの戦意を上げようとしているが、
大きな砲声が宴会を終わらせる。
岩出山支藩は、勝利した官軍山形勲によって、領地召し上げと北海道への移住を命じられる。
家老は大友柳太郎で、藩主は伊藤久哉だが、東宝では皮肉で冷たい悪役が多い伊藤が気弱だが、素直で新時代に生きて行こうという役を好演している。
船と徒歩で、最初に与えられた石狩川河口に行くが、不毛の砂地だった。
大友は、江戸時代の旅行記にあった肥沃な奥地に行こうとして、開拓使の許可を得て原生林の中を踏査に行く。
一方、食糧を積んだ船は行方不明になり、責任を取って宮口清二は自害する。その妻は杉村春子など脇役も非常に良い。
踏査の案内をするのは花澤徳衛で、アイヌの部落にまで行きつくが、川を船で下ろうとして激流で加東大介と花澤は死んでしまう。
なんとか肥沃な原野に行きつき、開拓使に願い出て払下げを受け、その開拓の費用に、国の倉庫建設事業を請負い、原生林に道路を作って開墾に向かう。
細かい筋もよくできていて、また高千穂の父親が明石潮など、大変渋い配役が良い。私は、この人が非常に好きなのである。
最後、第二陣の連中が、開拓地を見下ろす丘に姿を現し、開拓地の連中との再会の大ロングのシーンに感動しない者はいないだろう。
音楽は、小杉太一郎で、伊福部昭を思わせる重厚な響き。

東映は、言うまでもなく満州に行った旧マキノ映画の連中が戦後引き上げてきて作った映画会社であり、複雑な思いがあったと思う。
因みに撮影の藤井静は、満州からシべりア抑留をされた方である。赤木春恵も満映から引き揚げてきて東映に入った役者の一人である。
この作品が公開された時の併映作品は、『電光石火の男』で、言うまでもなく高倉健のデビュー作だった。
高倉と、『大地の侍』の監督佐伯清は、後に『昭和残侠伝』シリーズを作ることになる。
フィルムセンター

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