『芸者秀駒』

これを見ようと思ったのは、製作がニッポン・プロダクションとなっていたからで、この会社は何だと思ったからだ。
製作は山田典吾で、「ああそうか」と思った。
山田典吾は、山村聰、夏川静江らと共に現代プロを作り『村八分』『蟹工船』『真昼の暗黒』らを作ったプロデューサーで有名である。
だが、現代プロは、一応左翼独立プロの看板を揚げているので、山田としては、金儲けで映画を作るわけにはいかない。
だが、多分山田個人の会社としてニッポン・プロダクションを持っており、ここではこの映画のように一応汚職告発の作品だが、要は芸者映画であり、新東宝に売ることができたのだから。
事実、ここには芸者の生態と共に、銭湯に芸者が入浴するシーンも出てくる。

話は、造船疑獄事件のことで、造船会社の職員小笠原弘の活躍、そこに働く女子職員左幸子との愛、左幸子の父親で町場の印刷所の親父鶴丸睦彦、左の姉で芸者の利根はる恵らだが、主人公の芸者秀駒は日高澄子である。
日高は、京マチ子に似た大柄な美人だったが主役は数少ない。

                           

最後は、政治家も企業も大物は捕まらず、小物ばかりが逮捕されると言うところで終わる。
神田隆、田中筆子、小峰千代子らのいつもの左翼映画の面々だが、鶴丸の仲間で区役所の担当者に賄賂を渡す印刷業者の一人として澤村いき雄が出ているのが珍しい。
原作は菊田一夫だが、彼の『戯曲選集』にもないが、ラジオドラマだったのだろうか。菊田は無数に作品を書いているので。
阿佐ヶ谷ラピュタ

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