永井荷風の偉さを新たに思う

例のシリアで「イスラム国」に捕えられた後藤健二さんの問題について、「安倍政権の政策について云々するのは良くない、国民は一致して事態をも守るべきだ」との言説があった。
だが、後藤氏は、殺害されてしまった。これは日本で、政府を批判するような言論があった性だろうか。
勿論、全く関係のないことである。

こうした日本の政治の状況を見ると思いだすのは、永井荷風の日記の『断腸亭日乗』の凄さである。
そこには、東條内閣をはじめ、政府、軍部への呪詛のごとき批判で満ちみちている。
今とは比較にならないほど言論の自由はなく、憲兵などの取り締まりもあった当時に、あのように自由な言説を書くのは、本当に勇気のあることだったと思う。
当時、軍国主義体制に背を向けていた文学者は、本当に少数で永井荷風の他、谷崎潤一郎くらいだったのだから。
新進の英文学者だった伊藤整ですら、1941年12月8日以降の真珠湾攻撃とマレー沖海戦の勝利には、快哉を叫んだくらいなのだから。


さて、一人孤独に生活し、老人のように生きた荷風だが、実際は非常に元気だったようだ。
上の写真を見ても、他の人々に比べて大変に背が高くて颯爽としている。
断腸亭日乗の孤独な老人ぶりも、ある意味で彼の演技だったとも言える。

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