『陸軍中野学校・開戦前夜』

先日、市川雷蔵の『陸軍中野学校』を見て、急に他も見たくなり、ツタヤにもないので、映像は劣るがYouTubeにあるので見る。

最終作で、5作目である。
香港に行った椎名次郎は、英米のP機関の情報を盗むが、それによって日本の御前会議の決定事項が英米側に漏れていることが分かる。
そして、御前会議メンバーが愛国主義者清水将雄の大原邸に行っていることが分かり、そこから大原邸を調べることになる。
看護婦、薬屋木村玄、喫茶店久米明、そして画家の船越英二、隣の家の外人でセント・ジョセフ病院のレントゲン技師ピーター・ウィリアムスという具合に情報が流れていたのだ。
愛国主義者大原とは、徳富蘇峰みたいだが、これは前作の『密命』で、ゾルゲ事件を使ってしまったので、やや苦しい設定である。
一味の一人に女医一之瀬明子の小山明子がいて、この敵スパイの女と愛し合うというのは、1作目の小川真由美と同じで、やはりこの矛盾が良い。
雷蔵が、「日本人なのになぜ日本のスパイを」と聞くと、
小山明子は言う。
「私は日本人ではありません。あなたに祖国があるように、私にも祖国があるのです!」と言う。
中国人なのだろう。
この二人の別れのシーンは、大きな水門で撮影されているが、多分淀川あたりの水門なのだろう、他でも見たような気がする。
最後は、セントジョセフ病院地下の一味のアジトを強襲して終わるが、ラジオからは大本営発表の放送。
これで最後になったのは、非常に残念なレベルの高いシリーズだったと思う。
大原邸の看護婦は誰かと思うと、大映京都の大ベテラン女優の橘公子だった。
言うまでもなく、池野成の重厚な音楽が最高である。

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