『荷車の歌』

大傑作だった。望月優子主演で、明治末から戦後に至る女性の年代記もの。脚本依田義賢、監督山本薩夫。望月の夫は三国連太郎。夫婦の長女が左幸子。
制作が当時、農村で巡回上映をやっていた全国農村映画協会で、巡回上映が主で、メジャーでは新東宝で公開されたので、ろくに見た者がいなかったのだろう、大変評価されていない作品だが、『紀ノ川』等の5社の女性年代記映画に比して全く遜色のない立派な映画である。

荷車、それも人間が引く荷車人夫夫婦の話。いわば日本の最下層に近い人間の一代記であり、今見ると大変貴重な映像がある。
場所は広島の三次市の奥で、ここは原作者山代巴の生地のようだ。

よく考えれば監督の山本は松竹の出なのだから、メロドラマは上手なわけだ。
後に、『白い虚塔』『傷だらけの山河』、あるいは『華麗なる一族』『戦争と人間』等の大作メロドラマを作る資質は、初めからあったわけなのだ。
無意味な大作監督・佐藤純也とはレベルが違うのだ。

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