『裸の町』

1957年、久松静児監督で作られた東京映画作品、主演は森繁久弥、池部良、志村喬。

戦前に真船豊の戯曲として書かれて上演され、内田吐夢の監督でも作られたことがあるが、これはフィルムがないとのこと。

                                   

話は、レコード店をやっているインテリの池部良と淡島千景夫婦、そして彼の店の開店に金を貸した高利貸の森繁久弥、志村喬らの金をめぐる争い。

店は、新宿らしいが、池部は元々は作曲家を目指していたとのことで、クラシック専門で、歌謡曲は一切置いていない。

若い女性が『若いお巡りさん』と言ってきても、「内には歌謡曲はありません」と追い払ってしまい、これで店が成り立つとは思えない。

その通りで、借金がかさみ、ついには店を他人に売るはめになり、その小切手を森繁に詐取される。

森繁は、無学な男で、銀行を信用せず、自宅の押し入れにボストンバックに現金を入れて持っている。

妻は、杉村春子で、彼女の兄で、志村の会社の出入大工の織田政雄に進められて、志村がやっている「さくら相互協会」なるインチキ金融機関に全額を預けてしまう。

志村は、高利貸、ヤクザで、手下の左朴全には、「預金の2倍」を売り文句に「さくら相互協会」というインチキ会社をやらせていて、現金が集まると、破産させて持ち逃げしてしまう。

文無しになった池部と淡島は、心中寸前にまで行く。

池部も無能だが、淡島も死んだ友人の作曲家の家にいたペルシャ猫を可愛いと言って連れて飼う状態で、どっちもどっちの夫婦である。

最後、池部は、2つだけ残ったケース入りのレコードを売り払い、それで歌謡曲等を売ることを思いつく。

「ベートーベンが浪曲に、バッハが歌謡曲になる」

当然のことだが、一文無しになっても、レコードケースを下げて歩く姿は他人事ではないなとも思う。

阿佐ヶ谷ラピュタ

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