『旅する映写機』

35ミリ・フィルム用の映写機が、一つの映画館から全国の別の映画館等へ再利用されていることを描いている良い作品だと思う。

ただ、昔の日本映画の映画館での上映の実態については、大いに文句がある。

ピントが合っていないことなどは常識で、巻を入れ替えて上映してしまうこともよくあった。

蓮沼にヒカリ座という映画館があり、一応洋画を上映していた。ある時、3本立てでエリア・カザンの『草原の輝き』を見ると、自殺した親父が、再度出てきて主人公のウォーレン・ベィーテイにお説教するので驚いたことがある。2度目くらいだったので、特にびっくりもしなかったが、初めて見た人は驚いたに違いない。

また、高倉健のヒット作で『君よ、憤怒の河を渡れ』があり、横浜の伊勢佐木町の松竹の封切館で見ていた。

多分、土曜日の午後で、満員の劇場に行くと、上映が中断していた。すぐに始まると観客が文句を言っている。

「また、同じとこだよ!」

私は途中から見たので、分からなかったが、同じ巻を再度掛けたのらしかった。

こうしたことは結構あったもので、複数の館でフィルムを廻していたので、次の巻が来なくて待たされるということもよくあった。今は、シネコンになってそんなこともなくなり、安心して見られるのは良いことだとともいえる。

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