『喜劇・黄綬褒章』

1973年に東京映画で作られた森繁久彌主演の作品、彼が紳士姿で出て来て喫茶店でコーヒーを飲み、会社に入るが、次は作業服姿になる。

清掃事業の会社、し尿収集の会社、簡単に言えば「おわいや」で、森繁はそこのベテラン職員なのだ。

              

相棒は青空千夜で、係長は佐山俊二、やくざのチンピラで左とん平が出るなど、喜劇人が多いが、森繁の力だろう。

前半は、バキュームカーで、各家の糞尿を吸収する様子と、その悪臭の困惑等が描かれる。1970年代でも、東京23区の下水道普及率は40%で、多くはバキュームカーによるし尿収集だったのだ。

今では、誰も忘れているので、インチキ映画『ALWAYS 三丁目の夕日』のような、「昔はよかった」式の嘘がまかり通ることになる。

1950年代は、東京でも異常に臭い町だったのである。

バキュームカーは、実は川崎市の職員が考えたもので、それまでは汚わい車による収集であり、駐留軍ミュージシャンによる「ハニー・バケット・ソング」まであったのだ。

途中に、「私はあなたと塩原の芸者の娘だ」という川口晶が現れ、森繁の妻・市原悦子は激怒して家を出ていく。

同時に、元チンピラの黒沢年男も出て来て、森繁の会社の職員になる。森繁は、「し尿収集事業従事25年で黄綬褒章受章だ!」と佐山係長から告げられる。

天皇陛下に会えると、家族全員が喜び、隠し子騒動から生まれた家族の確執はすべてなくなる。

だが、黒沢のところにやくざが賭博金の取り立てに来たとき、森繁と青空千夜は、車から糞尿を大量に噴出させてやくざを撃退する。

これが新聞に載り、森繁は「会社に迷惑をかけた」と辞職願いを出すが、全員に励まされ、再び作業の様々な映像が展開されてエンドマーク。

脚本が松山善三、監督は井上一男と元松竹大船で、実態をよく踏まえた作品になっているのは、さすが。

市原悦子が、森繁の隠し子に激怒して戻る実家が草加の煎餅屋で、親父は殿山泰司だが、若妻の大原麗子をもらっているのが笑える。

日本映画専門チャンネル

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