『私の小さな楽園』と性道徳

ブラジル映画というだけで何も知らずネツトで買った中古ビデオ。実話で、3人の男と暮した女性の話。俗に「性道徳は、上流と最下層は目茶目茶で、中産階級だけが一夫一婦制を遵守している」といわれるが、その良い例の映画。

ブラジル北東部の極貧の田舎。
妊娠した主人公が3年後、子を連れ故郷に戻ってきて、初老の男と結婚する。
家には彼の独身の従兄弟も同居し、それともできてしまう。
夫は全く働かず、彼女が重労働の砂糖キビ刈で働く。

流れ者の労働者の若者が来て、それも家に入れ、それともできてしまい子を孕む。
産科医など、いるはずもなく、取り上げ婆が来て無事生まれる。
その子を、夫は町の公証人に自分の子供としてきちんと登録する。

ここにあるのは、性道徳など全く無関係な世界である。
成瀬巳喜男の『浮雲』やミケランジェロ・アントニオーニの『さすらい』の世界であり、黒沢明が『どですかでん』で描いたものでもある。

音楽は、ブラジルの大スターのジルベルト・ジル。
この人、昔来日したとき読売ランドで見た。
その際はひどく荒っぽく全く感心できなかったが、ここでは繊細で良かった。

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