最高に面白かった 『どたんば』

去年10月に満員で見られなかった作品、今度は小ホールなので大変だろうと2時20分に着くと無事座れる。

実は、京急の横浜駅に上がると、「人身事故で運行ストップ」とのことで、間に合うか心配したが、JRで品川まで行き、そこからはガラガラの浅草線で宝町に行く。

1957年、原作は菊島隆三のNHKのテレビドラマだそうで、映画の内田吐夢監督版は、橋本忍の脚本。

           

地方の炭鉱、田んぼの真ん中にある鉱山で、石炭というよりも亜炭の炭鉱らしく、駅名が出てきたが、岐阜の御嵩町のことで、全国一の亜炭の産出地だったそうだ。

炭鉱というよりも零細企業の町工場のようなところで、鉱山主は加藤嘉、工夫頭は外野村晋と弱弱しい役者なので、事故が起きてからの悲劇性が高まる。

「少し水が出ていた」と外野村晋は言うが、加藤は構わずに採炭をさせる。

立坑にウィンチで降り、そこから低い坑道で採炭現場に行くが、鶴嘴を水平に振って掘る、という具合でおよそ人力そのもの。

新人としてきた江原真二郎の目で、坑内が説明され、一番奥に行くとベテランの志村喬がいる。

江原は、ウィンチ係りの中村雅子と小学校の同級生で、男と飯田蝶子、戸田春子、風見章子ら叔母さんばかりの映画で中村は、唯一輝いている。

そして、大雨で工場が倒れ、水が出て立坑に土砂が埋まってしまい、一番の奥にいた5人が生き埋めになる。

早速、近所の鉱山から工夫が救出に駆けつけるが、それは工夫間の仁義のようなもので、逆には「ただで飲み食いできる」から来ると揶揄される者もいる。

通産省監督局の役人を中心に本部ができるが、救出は進まず、だが野次馬があふれ、アイスキャンデー売りや救出祈願の坊主までくる。

この坊主が高堂国典で最高。

冒頭でも「朝鮮に行くか・・・」と朝鮮人によって経営されている山もあり、鉱主は山本麟一で、工夫頭は岡田英治、彼らは作業に従事するが、差別的言辞から去ってしまう。

この鉱山の主導者が東野英治郎、被害家族の代表の工夫が花沢徳衛と、うるさい俳優なのでドラマが盛り上がる。

事故後100時間近くになり、デッドエンド近くに、元工夫の波島進が現れ、まったく別のアイディアで救出策が実施されて、全員無事生きて戻ってくる。

たしかテレビ版は、地底に閉じ込められた人間たちの「限界状況劇」的なドラマだったと記憶しているが、ここでは全体的な人間ドラマ、悪く言えば通俗的なほどの劇に拡大させて成功している。

被害家族の子供として鶴間エリが出ていた。

フィルムセンター小ホール

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コメント

  1. なご壱 より:

    Unknown
    私も昨日 見ました。前回の志村喬特集で観られなかったので、今回は見逃さないようにしました。満席の盛況でしたね。前半は少し退屈しましたが、事故が起こってから名吸い込まれました。高堂国典の断食祈願の坊主は良かったです。また事故の現場に野次馬相手のアイスキャンディー売りがいたのは笑ってしまいました。中村雅子は輝いていました。彼女の出演した映画は、ほかにみていませんが、その後どうしたのでしょうか。

  2. 中村雅子は
    彼女は、望月優子の姪で、青俳研究生から新東宝を経て東映に入ったそうです。『米』が有名ですですが、彼女はなんと加藤嘉に見初められて結婚して引退しました。確か娘がライターになったと聞いています。

    アイスキャンデー屋は、沢村い紀雄だそうですが、気が付きませんでした。

  3. なご壱 より:

    Unknown
    早速のご教示ありがとうございます。未見ですが今井正の「米」に中村雅子は出ているとは 初めて知りました。 加藤嘉は山田五十鈴といい 美人をものにしていますね。ライターになった娘は、昔 三波伸介の減点パパに出演したのを覚えています。パパと呼ばれて出てきたのが加藤嘉で おじいさんの間違いではないかと思ったものです。昨日ユーチューブで現存しているNHKドラマの「どたんば」を見ました。ストーリーがだいぶ違っていました。映画では橋本忍がかなり手を加えたのでしょう。主な出演者で映画にも出演したのは、飯田蝶子だけでした。

  4. 姪ではなくて
    中村雅子は、望月優子の姪ではなく、異父妹でした。
    つまり母親が同じなんで、どこか似ていましたね。
    訂正します。