『爆弾を抱く女怪盗』

一部で評判の高い土居通芳監督で、昔大井武蔵野で『地平線がぎらっぎらっ』しか見たことがなかったが、非常に面白かった。

良いのはテンポがあることとカメラワークが自由で独自の動きがあることだろう。

41歳と若くして亡くなられたのは、仕事のし過ぎ故のストレスなのだろう。

                 

冒頭、高倉みゆきが宝石の奪取を部下に命じていて、その通り列車の車内で、中年の男(岬洋二)のカバンが奪われそうになる。

その時現れた鉄道公安官・菅原文太によって強盗はできず、カバンも岬に戻る。

岬は、「中は下着だけです」と言い、菅原もそのまま返すが、怪しいと捜査する。鉄道公安官が、路線外で捜査をするのは変だと思うがいい。

岬は、横浜の東洋貿易の専務で、社長は沼田曜一で、宝石会社である。高倉の部下が沼田の会社を襲ったりいろいろある。

ここにも外人バイヤーで、ピーター・ウィリアムスが出ているが、彼は当時外人役で非常に沢山の作品に出ている。

吉田輝男がアクションする場所は、三井倉庫などがあった横浜の新興ふ頭だが、まだ米軍に接収されていた時代で、金網が張られている。

終末で、高倉は菅原に事件の全容を話す。

高倉みゆきの父は満州で会社をやっていたが、敗戦後の混乱で父は死ぬ。ついに新東宝お得意の満州が出てくる!

部下の沼田は、社長の財産を横取りし、高倉に結婚も迫る。いつもながら沼田の典型的な悪役ぶりが良い。

そのころ、別の部下だった九重京司等が帰国し、沼田の悪事を暴き、高倉は九重らと沼田への復讐をしていたというのだ。

最後、城ケ島から沼田らは逃亡しようとし、高倉と九重の娘で沼田の会社にスパイとして潜入させていた三条魔子をロープでつないでダイナマイトを入れ導火線に火をつけて自分たちは別の船で逃げる。

題名はここから来ているが、「爆弾を抱く」ではなく、「爆弾に繋がれた女」であるが、新東宝なので許してよいだろう。

これも、昔の娯楽映画の手法だが、ダイナマイトにあわや火が付くというところに菅原がランチで駆けつけてすべて解決。

高倉みゆきは、例の「女優を妾にしたのではない、妾を女優にしたのだ」の大蔵貢発言で有名だが、事実は大蔵の片想いに過ぎず、関係はなかったようだ。

音楽が渡辺宙明で非常に良い。

チャンネルNECO

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする