『剣難女難』

フィルムセンターで加藤泰特集、『剣難女難』は最初の長編劇映画で、京都にあった宝プロの製作、新東宝で公開された。

                      

「作家は、処女作にその総てが出ている」と俗に言われているが、加藤のこの作品もそうだった。

というのは、吉川英治原作の剣豪ものは、極めて伝奇小説性が強いもので、「ああ、加藤泰の本質はこういうものだったのだな」と思う。

主人公は黒川弥太郎で、御前試合で兄が破れてしまい、その敵を取れと周囲から言われるが、彼は臆病者で竹刀が苦手で、逃げてばかりしている。

その間に、様々な連中と会い、また旅芸人の女に惚れられたりする。

役者が黒川以外、ほとんど見知らぬ者ばかりなので、見ているのが苦しい。

江戸に出てきて、さる高貴なお方の市川春代に何故か惚れられるところで、ホッとするが、第一部はここまで、次は第二部へという構成。

この前に、理研科学映画で作った『潜水艦』、戦後入った大映で、黒澤明の『羅生門』の予告編も上映される。

この予告編は、昔BSの「予告編特集」で放映されたものと同じだったが、『羅生門』のテーマが人間の分からなさを描いているのはさすがである。

昼は、中村錦之助主演の『風と女と旅烏』を見るが、白塗りなしなど当時は非常にリアルで衝撃的だった作品だが、今見ると当たり前すぎて特に感銘はなし。

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