著作権と所有権

友人と村上春樹原稿流失事件について話したが、所有権と著作権の違いを全く理解していないことがよく分かった。

この問題の核心は、原稿用紙という紙の所有権は誰にあるのか、と言うことである。

村上春樹の文章からは、原稿用紙が元々誰のものだったかは不明だったが、安原顕が占有後すでに20年を経過しているので、悪意だが時効取得で安原のものである。
だから、常識的にはおかしいかも知れないが、それをいくらで売ろうが、棄てようが安原の自由なのだ。著作権はあくまで作品の表現に関する権利であり、作品を所有する権利ではない。

それは、絵画等美術品の売買を見れば明らかである。
時には数億円にも上る絵画取引において、一旦作品が画家の元を離れれば、いかに高額で売買されようが、それは絵描きには関係なく、代金を請求することはできない。欧州には、「追求権」と言って美術品取引において、作者が一定の代金を請求できる制度があるそうだが、日本にはない。

ただ、あくまでも所有権である。だから、それを公開したり、何かの方法で表現することは死後50年以内はできない。
以前、画家藤田つぐじ(漢字が出ない)の展覧会をやったとき、絵の所有者からは展示への了解はあったが、故人の妻から確かカタログ作成についてクレームがあり、裁判になった例があったと思う。
だらか、村上春樹作品原稿の所有者は、村上の死後50年間は何もできないのだ。

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