『南海の花束』

昭和17年5月に公開された東宝の航空映画、日本の戦況が一番よかった時期だが、戦争の感じは低く、民間航空機の会社大日本航空の操縦士の話。

大日本航空は戦前の航空会社で、今のJALとは無関係。有楽町にあった本社は、空襲で焼けたが、戦後日活の堀久作がそこを取得し、日活パークビルを建てた。

南方の島の基地に新所長・大日向伝が赴任してくる。洒脱な前所長菅井一郎に代り、厳しい方針で操縦士たちに臨み、田中春夫は遠近視に問題があるとして地上勤務に落とされてしまう。

実は私は、この遠近視、つまり立体視に問題があり、健康診断ではいつも引っかかってしまうので、この島ではパイロットになれない。

操縦士たちには、田中の他、清水将夫、月田一郎、大川平八郎ら多彩な連中がいて、その群像劇は非常に面白い。中に最年長の真木順がいて、彼は大日向とは、かつて一緒に登場した仲間で、真木の操縦ミスの事故で大日向はケガをして足が義足になっているのだ。

当初、台風の中、郵便機を無理やり飛ばさせて行方不明になるが、後に機は現地の島で保護されていて、その原因も機体の問題であることが分かる。

そして最後、南方空路開拓機の長に真木順が最後の飛行として選ばれて飛び立つが、嵐の中で落雷にあい翼が折れて墜落してしまう。ここは円谷特撮が冴えている。

2番機が飛び立ち、真木らが死んだ地点に花束を投げる。

太平洋戦争の最盛期であり、多くの兵隊が死んでいるので、民間の人間も当然だろうという感じがあり、全体に緊張感がみなぎっている。

大日本航空の基地は、根岸にあり、今は日石の根岸製油所の一番南側にある部分である。

音楽は早坂文雄

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