『怪盗三人吉三』

監督の冬島泰三は、ほとんど評価されていない監督だが、以前日活での時代劇『江戸の子鼠たち』が非常に良かったので見ると大変よくできた面白い作品だった。

歌舞伎の「三人吉三」で、和尚の若杉英二、お坊の北川弥太郎、お嬢の中村扇雀である。

歌舞伎のいいシーンが上手く取り入れられていて、有名な大川端で、お嬢が娘姿で男から金を騙し取って川に蹴り込み、それをお坊が見ている場面もある。

筋は、悪徳坊主の沢村国太郎とグルになって徳川11代将軍のお世継ぎ竹丸君を(目黒祐樹)、北竜二、山路義人ら幕府の悪人が亡き者にしようとするのを、暴き三人吉三が阻止する。

やはり、映画は悪役が良いと面白いという見本である。善玉の親分は寺社奉行の市川小太夫で、その部下の荒木忍の娘は井川邦子で、井川と北川は恋仲である。

最初の方で、沢村の寺の感応寺(すごい名前でいかにも嫌らしい)に、材木問屋の香川良介が子供を連れて来て、沢村が「あんな娘がいたのか」と聞くと、「あれは男で、長男、次男が早世したので、女の恰好をさせています」といい、後に中村扇雀の女形になるが、ここは林玉緒の名で、中村玉緒が出ている。

最後、北、沢村、山路らの悪事の証拠である、釘を刺し、竹丸の死を祈って釘を刺した藁人形を見つけ、寺社奉行のところに行こうとするが、夜中なので町に戸締りがあって行けない。

すると扇雀は、女形姿で火の見櫓の梯子をするすると登り、半鐘を鳴らして扉を開けさせる。

まるで八百屋お七である。

お白州で三人が神妙に座っていると、小太夫が言う。

「三人、その罪大きく鈴ヶ森で磔のところ、格段の処置で処払いとする」でハッピーエンド。

1954年、日活が製作再開をした年だったが、京都ではこのようにある意味で非常に良い、

だがのんびりした映画が作られていたのだ。

この約10年を経ずして松竹京都撮影所は閉鎖され、チーフ助監督の倉橋良介は、ピンク映画の監督になる。

衛星劇場

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