『香港ノクターン』を見た

『香港ノクターン』は、1967年に日本の井上梅次が監督し、元新東宝の西本正が撮影した香港映画だが、今回国際交流基金の「ブルース・リーを撮った男 キャメラマン西本正の伝説」で上映された。昨日も、裕次郎の『狂った果実』のリメーク版で中平康監督の『狂恋詩』が上映されたのだが、土曜の夕方はブラジル語の勉強なので、行けなかった。『香港ノクターン』も実はリメークで、元は1963年に井上が松竹で撮った『踊りたい夜』なのだそうだ。記録を見ると主演は、水谷良重、倍賞千恵子、鰐淵晴子である。井上は裕次郎の『嵐を呼ぶ男』も『青春鼓王』としてリメークしているそうだ。

話は、手品師の父親に三姉妹がいて、これが美人で歌と踊りが上手。
主人公は芦川いづみに似た美人の次女で、長女はペテン師に騙されて東京や台湾で放浪したり、三女はバレーリーナになろうと苦労したりするが、最後は次女を中心にその婚約者の作曲家等と歌舞団を作って成功するというバックステージもののミュージカル。音楽は服部良一。

ここで、すごいのはミュージカルだから、歌や踊りが沢山出て来るが、主人公たちの夢や希望もそのままミュージカルとして表現されるところで、全くの照れもなく堂々とやる。それは、井上のセンスであるが、なんの照れもなくやれる中国人俳優もすごい。

こういう「嘘話」は、堂々とやらないと実は見てる方が白けてしまうわけで、その点昨日見た『海猫』も本当らしく演技しているから駄目なのだ、とも言えるだろう。
あれは、どう転んだところで、一種の「嘘話」なのだから、悪人(佐藤浩一)は悪人らしく、善人(仲村トオル)は善人らしく見えるように演じないと映画として成立しないのに、佐藤もたいして悪い人間には演じていないので、主人公・伊東美咲が仲村にひかれることが納得できない。

『香港ノクターン』が、とても面白かった性か、午後から渋谷で野田秀樹の『走れメルス』を見たが、余り感動できなかった。作品自体もたいして良くないように思えたが。

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