『かあちゃん』

前から気になっていたが、見て唖然としたひどい映画である。市川崑の映画では最低だろう。やはり彼は『細雪』が頂点で、その後は惰性だったのだろうか。

美術、撮影、照明等は素晴らしいが、中身が信じられないほどにひどい。

2001年という、小泉構造改革で浮かれていた時に、こんな貧乏話をやっても、リアリティがあるわけもない。

天明の頃、江戸の貧しい人間が住む長屋に、若者(原田龍二)が泥棒に入るが、おかみさん(岸恵子)の気づかいや子供たちとの交流の中で、まじめな人間に再生していくというもの。

バカじゃないか!

ただ一つ良いのは、夜の室内のシーンが非常に暗いこと。最近の時代劇では、夜の室内でも照明で煌々と役者が照らされているが、電気照明がない江戸時代に、そんなことはもちろんなかった。

こうした明るい照明は、NHKの「大河ドラマ」が始めたことだと思うが、まことに困ったことである。

衛星劇場

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コメント

  1. 雫石鉄也 より:

    明るい照明、わたしは別にかまわないと思います。
    確かに、史実はそうかも知れませんが、ドキュメンタリーではないんですから、なにも史実どおりする必要はないと、私は思います。
    映画はフィクションなので、史実どおりやって、みにくく面白くないのと、史実とは違うけれど、みやすく面白いのなら、私は後者をとります。
    映画は面白ければいいんではないですか。なんでもかんでも史実どおりでないと面白くないのならば別ですが。

  2. やはり違うと思います。面白ければ良いとしても、ものには限度があります。
    最近の時代劇の「きんきらさ」は、ひどすぎると思います。
    問題は、江戸時代も今と変わらないのかと思う人がいるであろうこと。
    さらに、暗いシーンと明るいシーンでは演出の仕方が違ってくると思います。
    日本の文化がいかに暗さと関係してきたかは、谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』に書かれていますので、ご参照ください。

  3. 匿名 より:

    なるほど。暗いシーンと明るいシーンでは演出が違ってくるのですか。それは納得しました。しかし、映画は事実と違う演出も必要ですね。
    「ポセイドン・アドベンチャー」パニック映画の傑作だと思うのですが、船が転覆する映画です。あの映画、大津波で船が転覆するのですが、船は沖を航行中には津波で転覆しません。東日本大震災の時、大津波が来るというので沖に逃げた船は助かってます。津波で船が転覆というのは事実と違うわけです。でもあの映画は傑作だと思います。

  4. 雫石鉄也 より:

    すみません。上のコメントは私です。

  5. 時代劇について言っているので、映画一般について言っているわけではありません。

    しかし、私は今横浜市南区に住んでいますが、皆「そんなところにいるの!」と聞かれます。
    黒澤明の映画『天国と地獄』の黄金町の麻薬街だと誤解しているのです。
    黄金町が麻薬街だったことは、あったようですが1960年代のほんの数年のことです。『天国と地獄』の黄金町や伊勢佐木町は、すべて東宝の大オープンセットなのですから。黒澤の罪は大きいと思います。