『関東無宿』

鈴木清順監督作品。小林旭主演の任侠映画。原作が平林たい子で、前に裕次郎主演で映画化されているそうだ。

以前に見たと思っていたが、2回見ていたのは次の『花と怒涛』だった。
清順特有の映像の「お遊び」はまだ全面的ではなく、八木保太郎の脚本にかなり忠実に撮っている。

レンガ作りの町並みがやたらに出てくるが、車が走るなど、時代が現在(1963年)なのか、昔なのかよく分からない奇妙な作り。
レンガ作りの町並みは、実は東京の北品川で、私は20年前まで住んでいたので、面白いところを上手くピック・アップしていると感心した。
美術は、勿論木村威夫。
最後、旭が出てくる警察署の建物は、つい最近まで銀行の支店で使われていたもの。
木の橋は、当時すでになかったが、出てきた大半の建物は、1980年代まで北品川に実在していた。
川島雄三の『幕末太陽伝』の品川遊郭の町並。

話は、例によって落ち目のヤクザの組(組長の殿山泰治が結構ワルで面白い)で、もがく小林旭が、最後は横からイチャモンを付けてきた連中二人を斬り、対立する組の安部徹を脅して刑に服す。だが、殿山も安部の手下の平田大三郎に殺されてしまい、旭の行動は無に帰すという、一種のニヒリズム。

大広間で旭が殺して襖を破ると、全部倒れて、外が真っ赤になる。
そして、外に出ると、俯瞰で雪の降る中を歩いて行く旭。
『花と怒涛』で、全面的に使用した手法。

清順作品としては、後期の「お遊び」が開花する前の過渡的な作品だが、さすがに面白い。
女子高校生が、松原智恵子、中原早苗、そして新人の進千賀子だが、中原はいくらなんでも高校生には見えない。

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