松竹と日活

日曜日の午後、川崎市民ミュージアムで斉藤耕一監督の『海はふりむかない』を見た後、地下鉄で移動しフィルム・センターで斉藤武市の『東京の暴れん坊』を見た。

西郷輝彦の前者はそれほど悪くない映画だったが、日活作品の明るさ、面白さとの差異は圧倒的だった。

画面と描かれている世界の明るさ、若さ、アクションのダイナミックさ。
この二つの会社のカラーの差を如実に感じた。実は、斉藤武市も松竹大船の助監督だったのだが。
1969年と1960年の作品だが、松竹の方が古臭く、日活の方が全く新しい。
小林旭、浅丘ルリ子主演の斉藤武市作品は、この後、「銀座の次郎長」シリーズとして連作される。

西郷輝彦は日活でも映画を撮っていて、かなり見たが、松竹の西郷主演作は初めてだった。
優等生の兄(勝部演之)と正義感だが、ふしだらな生活を送っている弟西郷との話。言うまでもなく『陽の当たる坂道』や『エデンの東』を原型とするもの。
恋人が尾崎奈々で、実は原爆症で、最後は死んでしまう。
二人で広島に行くところは、即興演出風で、なかなか良かった。
恐らく、この映画は星川清司の古典的なシナリオがあり、それを多分斉藤が即興的な演出で変えていったもののように思える。
斉藤はシナリオを無視することで有名である。
中で、外人の若者たちが隠れ家に集まりで歌を歌っているが、『聖者の行進』なのが、おかしい。
1969年なのだから、いくらなんでもデキシーランド・ジャズではなく、せいぜいボブ・ディランの『風に吹かれて』くらいにしてほしいところだ。
斉藤耕一は猛烈なジャズファンなので、そこが音楽的には限界だろう。

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