ユダヤ教は、キリスト教よりも新しい

アラブや中東には昔から関心を持っていて、去年は横浜の朝日カルチャーセンターでアラビア語を習ったが、その余りの独自性に付いていけず挫折したので、今年は『ユダヤの精神史』を受講している。

先週は、東大の市川裕教授の「ユダヤ教とキリスト教」で、両者の関係が説明された。

中で、非常に驚いたのは、現在のユダヤ教は、3世紀ごろに出来上がったもので、キリスト教よりも後の成立だとのことだった。

私たちは普通、キリスト教は、ユダヤ教から生まれたと聞いているが、キリストが生きていた頃のユダヤ教は、現在のユダヤ教とはかなり異なったもので、あえて言えば「古代ユダヤ教」というべきものであった。

そこでは、エルサレムの神殿で毎日犠牲が捧げられるなど、原始宗教に近いような古代的なものだった。

そうした当時の堕落したユダヤ教に反発し、精神性に純化したものとしてキリスト教もできたわけだ。

そして、キリストの時代の後、ユダヤ国家は、ローマ帝国との二度にわたる戦争で完全に滅びてしまう。

そこでユダヤの民は、世界中(と言っても中世まではアルプス以南の地中海世界のみだったが)に離散することになる。

国を失ったユダヤの民は、それぞれの地域で、ユダヤ教の神父ラビを中心に、彼の指導の下で口伝律法集の「タルムード」に基づいて、子供には厳しい教育を施し、戒律の生活をするようになる。

これによって、中世以降欧州各地では、通訳や医師などの専門職の他、租税の徴収などを王や領主から請負うようになって金融業を営むようになり、中には国王から保護の特権を得たこともあったそうだ。

ユダヤ人に対する迫害は、十字軍を契機としたもので、11世紀以降、欧州ではユダヤ人排斥が庶民レベルで起こるが、逆に専門職や金融業では、大きな力を持つようになり、今日に至る。

ハイネからマルクス、アインシュタインからハンナ・アーレントに至るまで、世界の文学、宗教、学問、思想、政治に至るまで、ユダヤ人が大きな成果を上げてきたのは誰でもご存じのことだろう。

音楽と映画、演劇においても、アメリアのエンターテイメント産業の中心にはユダヤ人がいることは誰でも知っているだろう。かの小澤征爾も、ユダヤ系のコロンビアエンターテイメントと契約したことが世界的指揮者となった切っ掛けとのことだそうだ。

中東を訪問したトランプは、ユダヤの壁に行ったそうだが、ユダヤの民のことは少しでも知っているのだろうか、疑問に思う。

さて、ユダヤ人とは何か。

これは非常に難しい問題で、伝統的基準では、ユダヤ人の母親から生まれた者、あるいはユダヤ教を信じる者となる。要は、ユダヤ教信者となるのだろう。

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