映画『雨あがる』と原作の差異

「邦画ブラボー」さんの『雨あがる』の評ところにもコメントしたが、あの映画の台詞と人物の関係に大きな疑問があったので、山本周五郎の原作を読んでみた。

思ったとおり、三船史郎の藩主は、叙述されるだけであり、「余の自尊心が傷ついた」などの台詞は全くない。
また、最後に浪人の寺尾聡を迎えに来た家老・井川比佐志に向かって妻の宮崎美子が「あなたたちのような無能の人には、家の人の良さが分からなくて結構です」といった台詞を言うが、これも勿論ない。

厳格な身分制社会であった江戸時代に、浪人の妻が家老に向かってそんな無礼な言葉を言うわけがない。即座にお手打ちである。
あれが、黒澤明の脚本に忠実だとしたら、晩年の黒澤は相当におかしくなっていたといことである。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

コメント

  1. spok23 より:

    やっぱり
    コメントを読んでやってまいりました。

    やっぱりそうでしたか。

    それにしても黒澤監督、
    どうしちゃったんでしょうね?

    活字で読むとまた一段とすごい台詞だということがわかりますね。

  2. 「雨あがる」の中の「自尊心」
    はじめまして。
    黒澤遺稿脚本「雨あがる」の中の「自尊心」に違和感を抱いたものです。実はDVDのメーキングを見てまして初めて気づきました(ビデオのときは見逃し(^^;)。
    で、自分ちの掲示板(上記URL)で得々と「黒澤監督のミス発見」なんぞと能書き垂れました後に、念押し検索いたしましたら、即刻こちらで既出が判明いたしました。
    う~ん新発見ならず!残念!という気持ちもございましたが、なにはともあれ、ご挨拶かたがた表敬訪問させていただきました。自分の感覚に間違いなかったことを知り喜んでおります。ありがとうございました。