『ほろよひ人生』

1933年、PCLの劇映画第一作で、監督は木村荘十二、構成は森岩雄、脚本は松崎啓治と、後の東宝を支える者がスタッフ。

出演は、駅でアイスクリームを売っている藤原釜足、ビール売りの娘の千葉早智子、藤原の友人の丸山定夫、千葉に恋している音楽家の大川平八郎など。

日本ビールとのタイアップだったようだ。

駅のシーンからいきなり公園になり、古川ロッパと神田千鶴子の歌になる。悪漢の横尾泥海男らによる大金の強奪騒動がある。

大川作の歌『恋は魔術師』がヒットするが、所属する音楽大学からは除名されてしまうが、曲を半ばほめている学長は徳川無声。

最後、横尾らの現金を取得した藤原は、それを持って千葉のところに駆けつけるが、千葉は大川の求婚を受け入れて結婚してしまう。

藤原と丸山は、ビアホールを開店し、人生の楽しさを歌い上げる。

これを見るのは二回目で、以前横浜市中央図書館のビデオで見た時、

「こんな程度のものだったのか」と思ったが、シネマヴェーラの大画面で見ると感じはかなり違う。

ロッパと丸山の歌は上手いし、横尾らのアクションも結構切れがある。

上映後、矢野誠一さん、瀬川昌久さんと高崎俊夫氏でトークが行われた。

矢野さんは、「タイトルに堤真佐子、堀越節子とあり、どこに出ていたのか見たが、結局わからなかった」

私も分からなかったが、多分最後のビアホールのウエイトレスの一人だろう。

瀬川さんからは、音楽の紙恭輔氏の業績が紹介されたが、日本のジャズ、クラシック界に大きな業績を残された方で、初期のテレビでNHKの音楽番組でよく見かけた。

高崎さんからは、脚本は松崎啓治となっているが、日本のシュールレアリストの開祖滝口修造も入っているらしいとの話が披露された。

滝口は実際にPCL企画部にいて、記録をやっていたとのことなので、可能性はあるだろう。

そう考えると、冒頭の駅の抽象的な感じや、最後に大金を掴んだ藤原が、非常に長いエスカレーターを上がっていくが、この辺もシュールである。

ここは実際にどのように撮影したのか、あのようなエスカレーターは当時日本にあったのか聞きたかったが。多分、特撮かアニメによる撮影だろうと思う。

シネマヴェーラ渋谷

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