『乾杯! ご機嫌野郎』

1961年のニュー東映の作品だが、これほどの珍品もない。脚本井出雅人、監督瀬川昌治。

鹿児島から素人コーラスのリズム・ジョーカーズ(梅宮辰夫、南広、世志凡太、それに今井健二)が上京してくる。
自動車修理屋の叔父の東野英次郎の家に住込み、売出すため芸能界にあの手この手でアプローチする喜劇。

梅宮ら4人がコーラスし、時には踊るのだからすごい。
日本映画界で、最も泥臭い東映東京撮影所でミュージカルを作ることの無謀さ。
今井は『魚河岸の石松』であり、梅宮は『不良番長』なのだから、ミュージカル的洗練さとは全くの逆方向。
だが、意外にサマになっているのは、役者の力だろう。
裏庭の練習でファンになった隣家の少女が、病に伏しているのも、古臭い手法。
当時大ヒットだった、ドドンパの渡辺マリや松島あきら、若手歌手の山中みゆきらが出ているのは貴重な映像。

音楽はジャズの松井八郎だが、作詞が「人は誰もが皆幸せを求め・・・」と古臭い内容で、「これがジャズなの」と思う。
監督の瀬川昌治は、ポピュラー音楽評論家瀬川昌久氏の弟なので、本当はジャズのセンスはすごいと思うが、ジャズもブラジルのバイヨン(渡辺マリが歌う)も同じに扱われているのは、当時のレベルから見れば仕方がないだろう。
コーラスの吹き替えは、デューク・エイセスだと思う。

ラピュタ阿佐ヶ谷の瀬川昌治監督特集。

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