『爆薬に火をつけろ』

用があって関西に来たので、大阪九条のシネ・ヌーヴォで行われている「蔵原惟繕特集」に行く。

阪神九条駅から行くつもりで、梅田から尼崎に行くと乗り換えの電車がちょうど出たところで、上映開始に間に合わないだろうと思い、駅から降りてタクシーに乗ったのが大間違いだった。

関西の地理はきわめて不案内で、尼崎と大阪九条は相当に遠いのである。着いたのは上映開始から20分くらい過ぎていた。

主演は小林旭で、友人と建設会社を始め、いわゆる「風太郎」を使って県から受託して海面の埋立工事をやっている。

1959年なので、横浜ではなく、東京か千葉の埋立工事のことだと思うが、撮影場所には根岸湾の部分もあるように見えた。

台詞では住宅にする工事だと言っているので、今はデイズニー・ランドになっている浦安あたりのことだと思う。

後の蔵原惟繕、さらに小林旭映画とはまったく異なるもので、要はリアリズム作品なのである。

白木マリも出てくるが、ここではキャバレー・ダンサーではなく、女性カメラマン役。

安井昌二が元医者の風太郎の一人の役で出ているが、近藤宏、柳瀬志郎、土方弘などの面々も出ている。

高品格と対立する組頭は誰か見たことがあるなと思うと植村謙二郎で、この人は異様な容貌の元大映の俳優である。黒澤明の『静かなる決闘』では、戦場で医師の三船敏郎に梅毒を感染させてしまう悪役で強い印象を残しているだろう。

最後は、悪い土木会社の嫌がらせ、さらに台風の襲来で工事中断に追い込まれ、工事受託の返上に至る。

だが、今度はダムの工事だと全員がトラックを連ねて道路を疾走するところで終わり。

こういう真面目な映画を見ると、小林旭が本当は非常に演技の上手い役者であることがわかる。

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コメント

  1. ねこむすめ より:

    うわぁ、シネ・ヌーヴォに行ったのですか。あそこは、大阪人でも分かりにくい場所ですので、関東人は相当迷うでしょうね。阪神電車の線も、なんば線からの乗り換えは本数も少ないしややこしいです。なので、ねこは40分かけて自転車で行ってます。
    いまや大阪では唯一の昔の日本映画を上映する小屋です。ラピュタとかは行ったことないのですが、あんな感じなんでしょうか。

  2. 去年、九条駅には地下鉄で行ったことがあるので、今度は阪神線で行くことにしたのが間違いのもとでした。乗り換えも、次のを待てば5分遅れくらいで行けたと後悔しました。乗ったタクシーのおっさんは当然に阪神ファンで、前夜の広島戦での守備妨害のダブルプレーには憤慨していて非常に面白かった。
    阪神九条に行ってからは、近所の人に2回聞いて比較的簡単に着きました。結構有名なんだなと思いました。

    シネ・ヌーヴォは入口は狭いのですが、内部は広くて驚きました。首都圏の名画座で、あんなに高い天井の館はありません。大変に良い気分でした。
    阿佐ヶ谷のラピュタは非常に狭くて、シネ・ヌーヴォに比べれば、鳥小屋です。