真理明美、死去

元女優の真理明美の死が新聞に出ていて、『モンローのような女』、テレビの『プレイガール』などに出たとあった。間違いではないが、彼女には前史がある。いろんな映画に出ていたのだ。その一つが黒木和雄の作品だった。以前、私は次のように書いた。

黒木和雄特集、1961年羊毛振興会の企画の記録映画だが、なんとミュージカル。
羊をめぐる様々なイメージ映像の展開、飛躍がすごい。
その映像の華麗さは、後に黒木の名を一挙に知らしめた『飛べない沈黙』の映像の素晴しさと同等である。
シネスコ・カラーなのにも驚く。

途中でお針子のシーンがあるが、狭い部屋に若い女性を閉じ込め、早口の台詞と動きが交錯する。
市川崑の映画を真似したそうだが、九里千春、水垣洋子、五月女マリなど当時の若手女優が多数出ている。
次の『わが愛北海道』の主演の及川久美子(真理明美)もワンカット出ている。

ペギー・葉山の歌の作詞は谷川俊太郎。
スタジオや野外でのダンサーの乱舞など、完全に記録映画の枠を越えている。
このとき、すでに黒木和雄の才能が爆発していたのだ。
音楽小野崎孝輔。

つまり、彼女はいろんな映画のオーディションに出ていて、その第一が松竹の『モンローのような女』の主演女優の募集だった。これは、松竹としては異例の大宣伝で、これに彼女は受かって大々的に売り出されたのである。だが、作品はひどくて、本当は監督渋谷実の弟子でもあった篠田正浩に二部を作らせる予定だったが、中止になる。

彼女は、結構多数の松竹映画に出ているが、一番良かったのは、加藤泰監督の安藤昇主演の『男の顔は履歴書』だろう。そこでは、彼女は朝鮮人女性で、安藤の弟伊丹一三と恋仲になり、ロメオとジュリエットのように死んでしまう。

元が週刊誌の表紙だったようにルックスは素晴らしいが、台詞がひどかった点では、牧紀子にも似ている。

女優を辞めてからは、夫の監督須川栄三をよくサポートし製作を務めた。

その意味では、なかなか頭の良い女性だったようだ。

1960年代の女優のご冥福を祈る。

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